019

 私はのたうち回る写観の前に立つと言った。


「……ありがとう、ここまで導いてくれて。」


写観は息も切れ切れに答える。


「これが、私の、役目、だから……。さぁ……先輩、トドメを。人思いに終わらせてください。」

「終わらせない。」


そういうと私は結から残りの針を受け取り、床に丸くなるように刺す。


「舞台裏の住人、混沌なる者よ。今一度我に忠誠を誓え。」


私の詠唱に応じるかのように写観は光になっていく。


「これは……、先輩は馬鹿ですかよりによって殺そうとした相手を式神にするなんて。」


私は言葉を選ぶ、間違えないように、伝えるために。


「私はあなたの淹れる紅茶が結構好きなの、あれが飲めなくなるのは嫌だから。」


何も答えることは無く、写観京は私の式神になった。

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