018
「お待ちしてましたよ、先輩。あれ、結さんはどちらに? 」
「少しお手洗いに行くって、きっと緊張の糸が解けたのよ。」
写観京は全てを見透かしたように私の方をみた。
「はい、これが異世界の書物です。」
そう言って差し出してきた一冊のノート。
私はそれを受け取る。
そして同時に飛んできた本棚を横へと避けた。
「ああ、もうバレてましたか。」
「そうね、普通に考えて【怪物の呼び声】に当てはまるのがあの怪物以外にもう一つあったもの。
「結の話を聞く限り、あの怪物は視聴覚室には入らなかった。」
私は続ける。
「視聴覚室は教室の一種でしょう。それに入れないってことはあれは怪物の呼び声じゃない。それに怪物の呼び声の怪談には場所まで指定されていない。」
そう、怪異の領域を指定されていない。
ならなぜ私達は廊下と教室だと思ったのか。
それはこの幽霊が勝手に言ったからだ。
「いやぁ、正解です。さすが先輩ですね。じゃあさっさと始めてさっさと終わらせましょう。」
「そうね。」
私は鉄扇を構えようとする。
しかしその動きをすでにに読んでいるのか邪魔するかのように本を飛ばしてきた。
私は咄嗟に手刀で叩き落す。
「甘いですよ、先輩。」
後ろからいくつかの本が飛んできて避けきれない私の背中に容赦なく当たる。
鈍い痛みと共に吹き飛ばされ窓際の壁にぶつかる。
すぐに体制を整えて、構えに入る。
「先輩はもっと強いじゃないですか。」
今度は近くにあった椅子が飛んできた。
私はそれを足で蹴りいなす。
「じゃあこういうのはどうでしょう。」
今度は写観の後ろの本棚から大量の本が飛んで来る。
それを一つ一つ素手ではじきながら私は後退していった。
そうして後ろの本棚に背が当たる。
「チェックメイトですよ、先輩。」
後ろの本棚が倒れてきたが私にはそれを避けきれる余裕はなかった。
「先輩残念ですが私の勝利みたいですね。動けないようですしトドメをさしてあげます。」
目を瞑る。こんな状況を覆せるかと言われれば答えはもちろん決まっている。
「ぎゃああああああああああああああああああ」
図書室に悲鳴が響いた、もちろん私のものではない。
「が、ぐ、あああああ。」
私は、本棚をなんとかどかすと立ち上がり言った。
「いつから、脅威が私だけだと錯覚してたのかしら。」
「なんで、なんで、なんで。」
私は視線を送った。図書室の入り口に隠れてた彼女は大きな声で言う。
「綾香ちゃんは、絶対に死なせない。」
結の手にはもう何本か私の持っていた針が握られていた。
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