014

 結局私はまた保健室のベッドの上で寝ていた。


何があったのかを簡単に説明すると、視聴覚の女王に勝ったのだ。

神山結は私より先にこの怪異の攻略方法に気付き、私に示唆し続けていた。その本人は横のベッドですやすやと寝ているのだが。


 トランプ兵の弱点、それに気づけば意外と早く攻略できる。トランプ、つまるところ紙なのだからそれは水によってふやけるのだ。

そしてあそこには天井にスプリンクラーが設置されている、壊して水浸しにするには十分だ。


 水によってふやけたそれらは極端に動きを鈍くし、私はその隙間を駆け抜け女王のところにたどり着いた。


「まぁ、神山さんも舞台裏に来て慣れ始めているのでしょう、怪異が科学で解明されることに弱いことに気付き始めている。」


と、あの幽霊の声が聞こえたような気がした。


 さて、このあとはどうするか。

一度図書室のに戻ってあの幽霊の調べものの進捗を聞くのも手だろう。


「いえ、その必要はないですよ。だって私はここに居ますから。」


 気づけば小さな冷蔵庫に座っている写観京が居た。


「まったく、まるで私の幻覚を見ているみたいな対応やめてもらえませんかね。」

「無駄話はいいわ。」

「おや、焦ってますね。やはり神山さんはこちらに慣れ始めてるという私の推測が当たってるのですか。」

「ええ。」


 怪異に慣れてしまうとどんな問題があるのか、それはよく聞く話である。

怪異を引き寄せやすくなるらしいのだ。


例えば私がこの幽霊に会ったのも、おそらく慣れていたからだろう。


「次は音楽室とかいかがでしょうか先輩。音楽室の悪魔楽譜というのがあります。どうやら聞いた人間を死に誘う楽譜がそこにはあるらしいのです。」

「聞いた人間ってことは弾いた人間もかしらね。」

「その通りです。」

「いいわ、さっさと終わらせましょう。」


そう言って立ち上がろうするが、眩暈に襲われすぐベットにもたれかかる。


「先輩、無理はダメですよ。まだこちら側の住人にはなりたくないんでしょう。だったら休めるときはやすまないと。」


 そう顔をニヤつかせながらこの幽霊は言うのだった。どうやら表情はともかく心配はしてくれているらしい。


「でもタイムリミットは刻々と迫ってるの、私がのんきに休んでる暇があると思う? 」


私は苦し紛れに言った、自分にも言い聞かせるように言ったのだろう。

この幽霊がなんて言い返すのかは分かっている、でも理解したくない。認めたくない。


「あなたが死んだら、だれも彼女を助けられないんですから。」

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