013
五十対一で勝ち目があるかどうか。簡単な話だ、どんな人間であってもどんな力量があってもその数量相手に勝ち目はなかった。
十体が攻撃、残りは壁役。徹底的に戦術性に富んでいるという奴なのだろう。
どんなに攻撃しても、十体の攻撃役を圧倒するほどの力も私には無いだろうし、ましてや残りの壁役を蹴散らせるほどの突破力もない。
玉砕覚悟で特攻をしても女王までたどり着くのは不可能だろう。
私はこの状況に、絶望的な状況にただただ笑みを零すしかなかった。
私は……この力は、舞台裏に堕ちてしまった人々を救う為の力で、もうあの悲劇を起こさない為の力だと、そう信じていた。そう思いたかった。
でも、私には何もできなかった。
その現実を突きつけられた時、私はまだ、希望を持てているだろうか。
否、もう無理だ。私にはこの現実に耐えられる理性はもう残っていなかった。
嗚呼、彼女の、神山結の声が遠くに聞こえる。悔しいということよりも申し訳ないという気持ちのほうが私の思考を先行した。
せめて、最期ぐらい彼女の最後の声を聞きたい。それが私に対する罰なのだから。
「相手はトランプ兵なんだよ。 だったら弱点は決まっているじゃない! 」
その声は確かに私に届いた。彼女の最後の言葉。
私は薄れゆく意識の中、手に持っていた鉄扇を上に向けて思い切り放り投げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます