013

 五十対一で勝ち目があるかどうか。簡単な話だ、どんな人間であってもどんな力量があってもその数量相手に勝ち目はなかった。


 十体が攻撃、残りは壁役。徹底的に戦術性に富んでいるという奴なのだろう。

どんなに攻撃しても、十体の攻撃役を圧倒するほどの力も私には無いだろうし、ましてや残りの壁役を蹴散らせるほどの突破力もない。


玉砕覚悟で特攻をしても女王までたどり着くのは不可能だろう。


私はこの状況に、絶望的な状況にただただ笑みを零すしかなかった。


 私は……この力は、舞台裏に堕ちてしまった人々を救う為の力で、もうあの悲劇を起こさない為の力だと、そう信じていた。そう思いたかった。


でも、私には何もできなかった。


その現実を突きつけられた時、私はまだ、希望を持てているだろうか。

 否、もう無理だ。私にはこの現実に耐えられる理性はもう残っていなかった。


嗚呼、彼女の、神山結の声が遠くに聞こえる。悔しいということよりも申し訳ないという気持ちのほうが私の思考を先行した。


せめて、最期ぐらい彼女の最後の声を聞きたい。それが私に対する罰なのだから。



 「相手はトランプ兵なんだよ。 だったら弱点は決まっているじゃない! 」



その声は確かに私に届いた。彼女の最後の言葉。


私は薄れゆく意識の中、手に持っていた鉄扇を上に向けて思い切り放り投げた。

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