012
気にしてる時間は無くても、やはり痛みは人間の行動を鈍らせる。
その痛みというのは生きている証なのだ。生きている、自分はまだ、生きている。ならばやれることを精一杯やりたい。
そんならしくもない事を考えながら痛めた足を気遣いつつ私は保健室への道を走っていた。
しかし保健室に行く途中で思わぬものを見つけ立ち止まった、立ち止まってしまった。それは、私を呼んでいるかのように、罠であるかのようにその場に転がっている。
神山結と書かれた上履き。
周囲を見渡しながら一番近い教室を見る。
視聴覚室、どうやら迷ってる時間は無さそうだ。
中に入るとそこは薄暗い部屋だった。
そして部屋の奥には深紅のドレスに身を包んだ女性が椅子に座って居る。
女性の横には大きな砂時計が置かれており今も砂は落ちていた。その中に神山結は居た。
「あら、お客さんかしら? 」
「客と言うよりはお姫様を助け出す勇者に近いわ。」
「そう、でも今私は忙しいの。この不届き者の処刑でね。」
「その不届き者を返してもらうわ。」
「あら、威勢だけはいいのね。じゃあゲームをしましょう。」
次の瞬間だった、女性は、否女王はその針をひらりとかわしていた。
「投げ針とは私も甘く見られましたわ。それじゃあゲームの内容は。」
短期決戦が失敗した、こうなるとかなりまずい。
「私の所に制限時間以内にたどり着きなさい。」
私と女王の間に無数のトランプ兵が出現した。
不思議の国のアリスでよくおなじみのトランプ兵。
化物に、怪異に、人間の常識は通じないと前々から思っていたがこうしてみると改めてそれを実感した。
かといって逃げる訳にもいかない、そもそも逃げるつもりもない。
五十体以上のトランプ兵に対し鉄扇を構えた。
上等だ、やってやる。
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