011
綾香ちゃんはわたしのためにあそこまでの怪我を負ってまで戦ってくれた。情けない、自分が。
たった一人の少女に、同級生にすべてを背負わせてしまった。文字通り全てだ。精神的にも肉体的にも彼女は疲弊しているだろう、なにせ彼女もまだただの女子高生なのだ。頼るべき大人じゃない、助け合うべき同級生なのだ。
そんなことを考えながら自分の目を軽く制服の裾で拭ったあと、わたしは保健室へと向かった。
少しでも役に立ちたい、幸いわたしは保険委員で手当の心得がある。保健室の道具の配置も覚えている。これを生かせずどうするのか。
ただ、この真っ赤な夕日が不気味で震えながらも廊下を進んでいた。
がんばれわたし。何度も自分に言った、言い聞かせた。
そんな苦労もあってか意外とすぐに保健室にたどり着くことができた。わたしもやっと役に立てる。
扉を開け中に入ると保健室特有の匂いがする、この匂いも慣れたものだ。
私は一通りの手当ての道具をまとめると、救急箱に詰め込んで保健室から出る。一歩、また一歩と廊下を歩きながら周りを見渡した。
そして気づく、後ろにそれが居たことに。あの忌まわしき犬のような化物が。
震える手を抑え、震える体を制し、わたしは走りだした。
こんなとき綾香ちゃんなら迷わず戦うのだろう。力が、能力が無いのが悔しい。
そんななか距離を離した所でわたしは近くの教室に逃げ込んだ。
その暗い教室は、視聴覚室だった。
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