010
朦朧とした意識、たゆたうような感覚に身をゆだねていると不意に声が聞こえた。
「いやぁ、先輩も怪我するんですね。どうですか、これを期に私たちの仲間入りするというのは? 」
その声で完全に意識が覚醒する。
「お断りよ、まだそちら側に行く気はないわ。」
「まだ、ということはいつかこちら側にくると。」
「揚げ足を取るのだけは上手いわね。」
「ところでどうして刀が都合よく手元にあったんです? まさかそうなるのを予測してその位置に設置したわけでもないでしょう。」
「怪異っていうのは認識で、認知する事で発生するの。」
「つまり、鎧武者から渡された刀を自分の手元にあると認識した。と」
「その通りよ。」
元はといえば刀も含めて怪異なのだ、あれが実物でない以上認識を操作する事による物質の移動は十分できる。
「ところで……。」
私は周りを見渡すが神山結の姿が見当たらない。
「神山さんなら貴方の治療のために保健室へ行きましたよ。」
「別に気になってはないわ。」
「おやぁ、お得意のツンデレですか、こういう時ぐらい素直になりましょうよ? 」
「うるさい、心配はしてないわ。」
胸元から赤い石を取り出しそれを眺める。うん、彼女の身に何かあったわけじゃないようだ。
「それは先ほど言っていた護符ですか? 」
「知らせ石、私はそう呼んでいたわ。虫の知らせも一種の怪異であるという理論でできた石らしいけど良くは知らない。」
「結局心配してるんですね。」
「……次の七不思議は? 」
「視聴覚の女王、ですね。校舎で生徒を見つけ視聴覚室に連れ込んで監禁するそうですよ。対処法としては監禁された時なにかゲームしないかと女王に誘われるらしいんですがそれに勝利すれば良いらしいです。」
「意外と簡単そうな怪異ね、また。」
「前回の怪異はどうやら一筋縄ではいかなかったようですけどね。」
そんな話をしてるときだった。石が鈍く光り出す。
私はすぐに立ち上がり駆け出そうとする、痛みを気にしている時間は無いらしい。
「どこに行かれるのですか? 」
「保健室、そのあと視聴覚室に行ってみる。」
「あなたの今の機動力で可能でしょうかね。まぁ応援してますよ。」
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