009

 鎧武者の真剣の一振りを一つ一つ避けていく、こういったのは私の専門ではないのだが。


おそらく【体育館の惨殺死体】は怪異の結果の噂だったのだ。

怪異に襲われた結果出来上がった噂。そう考えてしまえば対処は簡単、こいつを倒せばいい。


鎧武者の攻撃が私の避けだけじゃ対応しきれないのに気づく。

私は受け流しも多様しながら鎧武者の攻撃をいなすように動き始める。

体育館で、鎧武者の刀を素手でいなす女学生という異様な光景ができたその時、鎧武者が動きを止めた。そして小太刀を私の足元に投げつけてきた。


「取れ、お前の本気を見せてみろ。」


私は少し悩んだがそれを手の届かないところに蹴った。


「生憎刀は使い慣れてないの、自分にあったものを使わせていただくわ。」


そう言いながら鉄扇を取り出す。


「そうか、ならば問答無用。」


こうして鎧武者との戦いが始まった。


攻撃を受け流すと同時に返し手で鎧を打つ、それと同時に鎧武者の素手の攻撃をくらって体育館の隅まで飛ぶ。壁に体を打ちつける前に受身を取る。そこに鎧武者が刀を振りかぶったが同時に体を横に動かすことでかわした。


すかさず鎧武者の足元を狙い攻撃するが上手く力が入らなかった、先ほどの打撃で少し傷めたか。


起き上がると同時に蹴りを入れることで何とか間合いを調整する。

お互いににらみ合いが続く。


「お前、本気を出してないな。」

「これでも結構本気でやってるつもりなのだけど。」

「そのくせ呼吸一つ乱れて居ないぞ? 」

「それは貴方もじゃない。」

「うむ……だから先ほどから出入り口で覗いている娘を殺ろせば少しは本気になるかと思うのだが。」


言い終えるや否や鎧武者は出入り口に走り始めた、急いで追いかけるが間に合いそうにない。私は鉄扇を鎧武者の足に投げつける、それと同時に鎧武者がこっちに切り替えしてきた。

そのまま、鎧武者は私に近づき鞘で私を地面に叩き付けた、鈍い痛みが走る。私の意識は朦朧とし始め、視界が歪む。


「お前の読みが甘かったようだ。私の勝ちだ。」


そして最後の一振りを


「ええそうね、私の勝ちよ。」


刀ごと、鎧武者を切り裂いた。


「……!? 」

「何が起きたか分からないって顔してるわね、最初に蹴った刀。妖力を込めておいたのよ。」


私の手には最初蹴った小太刀が握られている。


「残念だけど、私は一通りの武道は叩き込まれてるの。あまり成果は出なかったけど。」


鎧武者に小太刀を突き刺し、私は出入り口へ向かう。案の定涙目になってジュースの缶を二つもった神山結が立っていた。


私はできるだけ、ニッコリと微笑む。それと同時に意識は遠のいていった。

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