008

 神山結を一言で現すとするならば、不思議な奴、だった。


何故だろう、彼女と話していると自分の意志で捨てて忘れかけていた何かを思い出す。そんな感情になるのだ。


「何か考え事ですか先輩、私の話が耳に入っていませんよ? 」

「え、ええ。ごめんなさい。それで解析が終わった怪異はあるかしら? 」

「体育館の惨殺死体、そらが解析が終わった怪異の名称です。すでに死亡した怪異なので危険度は低いかと思われます。内容としては昔体育館で惨殺死体が発見されたが身元が解らなかった、そして今も体育館に行くとその死体が現れる。」

「なるほどね、現れるのは死体だから危険度は低いと。」

「はい、ちなみに学校史等で確認してみましたが体育館にそのようなものがあった事は無いみたいです。いわゆる偽史の類かと。」


「ところで神山さんはどちらに? 」

「お手洗いに、一応結界張って護符持たせたから何かあればすぐわかるはずよ。それがどうかした? 」

「いえ、神山さんと何かあったのかと思いましてね。」

「いえ、特にないわ。」

「そういう事にしておきますね。先輩それでは次の怪異も頑張ってください。」


図書室を出るとお手洗いから戻ってきた神山結と目が合った。


「次の行き先はどこなの? 」

「体育館、体育館の惨殺死体って言う七不思議があるらしいわ。あまり危険なものじゃないと思うけど。」

「体育館の惨殺死体……なんか嫌な予感がするよ。」

「大丈夫、死体があるだけみたいだから。」

「いや、死体があるって事は殺した人間が居るってことでしょう? 」


生身の人間をあなたは相手にできるの? と彼女の目が訴ええくるのだった。


「私だって簡単にやられないわ。」


私は歩き出しながら自分の手首に触れた。そして自分の命を感じる。大丈夫だ、そう自分に言い聞かせながら。


 体育館に着くが当然誰も居ない。死体もない。

神山結は不安がりながらも私を信頼して着いてきてくれている、どうするべきか……。

私は考え込んだがすぐに、千円札を渡して言った。


「体育館の入り口の自動販売機でジュース買ってきて頂戴、お釣は要らない。」


彼女はそれを受け取るとトテトテと歩きながら不思議そうな顔をしつつ体育館を出て行った。五分が限界だろうか。


私の頬を刀が掠める、目の前には鎧武者が居た。

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