006
「なるほど、そういう経緯があって神山さんは怯えてるのですね。」
図書室で何故か待っていたかのように座っていたこの幽霊に事の経緯を話す。
「ふむふむ、それでその手に入れたノートはどちらに? 」
「これよ。」
私はノートを差し出した。
「見た感じ、一九七五年ってところでしょうか。いやぁ、良い物を手に入れましたね。」
「なんで年代が限定できるのよ。」
「読めるページの一番最後の日付が一九七五年だったので、私の方でも一つ新しい情報が出てきましたよ。」
「聞かせてもらおうじゃない、その新しい情報とやらを。」
「七不思議その四、異世界の書物。簡潔に説明すると七不思議の書かれた本ですね」
彼女は胸を張ってあたかも大手柄であるかのようにそれを言った。
「待って、もしかしてこのノートが七不思議のひとつ? 」
「はい、そうですよ。あとこの世界からの脱出方法とやらも分かりました。安全な奴です。」
「まさか、すべての七不思議を見ろとか言わないわよね」
「残念ながら惜しいです、正確には全ての七不思議を供養することこそが今回のミッションという訳です。あの、露骨に嫌そうな顔するのを止めません? 」
嫌そうな顔も何も少し面倒くさいのだ、それに符や針にも限りがある。長期戦になったらそれこそ不利だ。ただ,不利だろうと戦わなければならない。私だけなら強引に脱出することも可能だろうが隣には神山結、彼女が居る。私も二人を脱出させるだけの妖力は無い。
……やるしかないのか。実質私にはこの幽霊が提案した事をやるしか方法が無い、
選択肢が存在しない。
「それで、すべての怪異はどこにいるか見当はついてるのかしら。」
「怪物の呼び声は教室および廊下でしょうけど他はわかりませんね。」
ならば総当たりするしかないのか、かなりの長期戦を覚悟しなければならなそうだ。
「あの……多分、場所分かります。」
口を開いたのは神山結だった。どうやら落ち着きを取り戻し途中から話を聞いていたのだろう。
「放送室、体育館、音楽室、視聴覚室、図書室、屋上。多分これで全部だと思います」
「それは何を根拠にしているのかしら? 」
「えっと、よく出るって噂される場所だから……です」
なるほど、確かに怪異は噂に縛られるからそれはいい線いってるかもしれない。
「たぶん正解だと思いますよ先輩、その情報は信じて良いです。」
「あなたも何故そう言えるのかしら、まさか同族の感とか言わないわよね。」
「強いて言われればルールがあるのですよ、怪異にも。場所と関係していること、他の領域では無力になること」
「領域?」
「はい、怪異には発現領域が存在するんです。その領域を出るとその怪異は効力を失います。恐らく放課後の鮮血空が屋上、死神の放送が放送室、怪物の呼び声が教室及び廊下、そして異世界の書物はここ図書室でしょうね。」
「ちなみにあなたの領域は? 」
「千鳥野綾香の知っている場所、ですね。」
「……どうしてそうなってるのかしら。」
「私は何も知りません、今は知る必要が無いのです。」
「まぁいいわ、ところであなたはそれの解析できるのかしら? 」
「ここでなら恐らく、ただ時間かかると思いますので先にどれか行かれますか? 」
「そうね、なら順番に回ろうかしら。」
「私も行きます。」
私が神山結の方を見ると彼女はハッキリそう答えた。
「正直、あなたは邪魔よ。ここで待っていなさい。」
「嫌です。」
何が彼女を動かしているのだろうか、あんな化け物を見た後にそれにもう一度会いに行くと言っているのを理解していないのだろうか?神山結は少し黙ってからこう付け加えた。
「私の為にもう一度あの怪物と戦うというのであれば、私も出来ることをしたい。あなた一人に責任を押し付けたくはない……です。」
「守り切れる保証はないわ、最悪死ぬわよ。それでもいいなら勝手にしなさい。」
私は図書室を後にした。
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