005

 私の在籍しているクラスに着く。確かあの時教師曰く隣のクラスと言っていたはずだ。私は自分のクラスの前を通り過ぎ隣の教室へと入った。


中は静まり返っており、窓の向こうの鮮血のような空と相成って不気味さを演出している。


「どうして怪異っていつもこんな風に不気味さを演出したがるのかしら、理解しがたいわ。」


教卓の上に置かれている座席名簿から神山の名前を探す。意外とすぐに見つかった。

私はその席を見るが他の席と同様荷物は無くがらんどうとしている。

やはり移動はしてしまったか、そう思いながら視界の端の掃除用具入れのロッカーに目が留まった。


 中から二つの目玉が私の方をじっと見つめているのだ。

ああ、なるほど。私はすぐにロッカーの扉を開ける。

そこには小柄で細い華奢な体の女子生徒が居た。顔立ちもそれなりに整っており女性の私からでさえ可愛いと思える。


「あなたが神山結かしら。」


彼女は顔を崩し、怯えながらコクリと頷いた。


「安心して、私はあなたを探しに来ただけだから。一緒に帰りましょう。」


彼女は恐る恐る私に訊く。


「もしかして、さっきの放送の……。」

「ええ、千鳥野綾香。それが私の名前よ、あなたとは隣のクラスね。」

「あなたはアレを見た……? 」


彼女は少し黙り込んだ後、そう質問してきた。


「怪物の事かしら、それなら残念ながら見てはいないけれど。でも、似たような怪物ならいつもいろんなところで見てるわ。」


彼女は不思議そうな顔をしている。しまった、抽象的に表現しすぎたのだろうか。


「いわゆる、幽霊や妖怪。その類が私には見える。私の家系は見える家系だから。」


彼女は少し落ち着きを取り戻してきている、ああいった怪異の類を見て正気を保つ方が困難な話だがまずは移動した方がいい。


「大丈夫、そういった化け物の対処には慣れてるから。」

「ありがとう。」


彼女は小さくそう言った、そして一冊のノートを差し出しながら、


「さっき、保健室から教室の戻ってきたらこのノートがあって、それを手に取ったら……。」


と、落ち着きを取り戻しながら言った。


「少し見せてもらうわ。」


中パラパラとめくると七不思議についてまとめられているノートだった。


「とりあえず、移動しましょうか。ここに長い間居ても・・・」


後ろに気配を感じた、すぐさま振り返るとそこには犬のようなものが居た。


痩せこけた犬のような姿で、口からは蛇のように長い舌を舐めまわすように出している。呪符が効くだろうか? どちらかと言うと海外の怪物のような見た目だ。


とりあえず、私は懐に忍ばせた呪符を投げつけた。

少し怯むのを確認し、すぐさま神山結の手を引っ張り教室から出る。


図書室の方向を確認するとその方向に走り出すのだった。

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