第15話

 朝食を食べ終えた四人はリビングで2時間後の戦闘開始まで休憩することにした。


 アナログなレコードプレイヤーから流れるクラシック音楽の1/fのゆらぎとベルガモットを錬金術で調整したアロマで張り詰めた緊張を解く。


 当然、このレコードプレイヤーも現代技術と異世界の魔導具で作られており、真空管が魔導具の効果で青白く光っていた。

 魔導具には物資を復元する力があり、いつでも最上の状態が保たれる。又、音の効果を高める効力のある魔導具をスピーカーに搭載してあり、1/fのゆらぎ効果を強化しているのである。

 

「落ち着くわね」

「ですわね」

「てっ言うか眠くなるっす」

 実際、三人ともお嬢様なのだが、ユウコの両親は末っ子である彼女を自由奔放に育てた。というか甘やかした。

 そのせいで貴族子女としての礼儀作法、趣味趣向などをユウコは持ち合わせていない。

 音楽はクラシックよりPOPミュージックのキャッチーな音楽が好きで、趣味はアニメの模型作りや美少女フィギュア集めで、アニメ視聴が大好きなコミュ力が高い系のオタク女子なのだ。

 それ故に、彼女にはクラシック音楽は退屈でしかなかった。


 そんなユウコを趣味趣向がわかる家神様マリベルがエリオに彼女にはアニメでも見させたらどうかと進言をする。

 特に彼女はもともと好戦的なところがあるから、落ち着かせるよりも気分を高揚させた方が力を発揮すると言う。

 エリオはその言葉に従い彼女だけをシアター室に連れていく。

 もちろん、それを見てマリアも二人の後をついていく。

 起きてる間はエリオの側を離れていたくないのだ。なんなら寝てる間も一緒にいたいまである。


「フランシスさんもアニメ見ますか?」

「エリオ様が見るなら」

「僕は川上さんを案内したら、戻りますよ」

「では、お供して一緒に戻ります」

「は、はい?」

 シアター室は一階のリビングのすぐ側にある、それをわざわざ付き合うというマリアに少し困惑しながらも三人でシアター室へ入っていった。


 シアター室も現代技術と異世界の魔導具で作られている。

 この部屋はどんなに爆音で音を出しても外に音が漏れることは無い。

 部屋の壁を現代技術の空間分断装置により区切っているため音が絶対に外に漏れないようになっているのだ。

 動画視聴用デッキは科学技術で作られた3年前のハイエンドモデルでネットから自動で最新作をダウンロードでき30分の高画質動画が1万本保存できる容量を持つ。

 動画データーは昨日のものまで入っているので、古いものしかないと言うことはなくユウコでも楽しく見れるだろう。


「クレア、アニメの一覧出して」

『アニメ一覧ですね、了解しました』

 機械音声が響き、画面がつくとアニメの一覧が表示された。この音声は ハウスに搭載されているAIで全ての電化製品を制御する。

 

「お! ベルダ戦記あるじゃないっすか。クレア、ベルダ戦記でお願いするっすよ」

『了解しました、ベルダ戦記を再生します』

 ユウコの言葉で動画が再生される。AIは日常に根ざしており、この世界の者ならだれでも使える。当然、脳筋ゴリラのユウコでも問題なく使えるのだ。

 ユウコはリクライニングシートに座るとお菓子を要求したが、腹ごなしのための時間なので流石にエリオもダメ出しをした。

 不満顔で文句を言いつつも、アニメが始まるとそちらに集中し不満も忘れて見入っていた。


 ユウコを残し、リビングに戻るとマリアも後ろからトコトコとエリオについてくる。

 3メートルほどの距離にあるシアター室にわざわざついてくると言うことは何か相談があるのかもしれないと思ったエリオは彼女に何か心配事とかあるのかを聞いたが、特にありませんわよと質問の意味がわかりませんと言うような表情をされた。


 そのやりとりそれを見てミリアは一人吹き出し笑う。もちろんマリアがエリオについて行ってる理由がわかっているからだ。

 男って鈍感よねと聞こえないように独り言を言うと目をつぶり再びリラックスタイムに入った。

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