第13話
悩んでいるエリオに後方で見ていたマリアがユウコにミリアを背負わせたらと彼に提案した。
100kgの大剣を持ちながら30kgのミリアを背負うと言うのはどう考えても馬鹿な提案だが、レベル15相当の筋肉を持つユウコならできるかもしれないと彼は思いマリアの提案に乗ってみることにした。
ユウコにミリアを背負ってもらうと、そのままマネキンの所まで全力疾走をしてもらった。
ミリアを背負って走るユウコのスピードは背負ってない時と変わらず速かった。
この速度なら問題がないと感じたエリオはユウコに大剣を持たせもう一度走らせた。
100kgの大剣はかなりの足枷になるはずだが、そんなそぶりもなく、ユウコは再び同じ速さで走り抜けたのだ。
ただ二回目は大剣を持っていたせいでミリアを支えられなく途中で振り落としてしまったのが残念だったが。エリオはすでに改善策を考えていた。
「川上さんすごいね」
「へへへ、任せるっすよ」
「振り落とされちゃった、ごめん。次はちゃんと掴んでおくわ」
「それなら大丈夫です。改善策を考えましたから」
そう言うとエリオは長いロープと短剣をバッグから取り出すとユウコに再びミリアを背負わせ二人をロープでぐるぐる巻きにしてまとめた余ったロープを切り、それで大剣と杖をまとめた。
「ヤクザに簀巻きにされて穢土湾に沈められる気分っすよ」
「助けて……私たち本当に何も知らないの……お金ならいくらでも払いますから」
ミリアの迫真の演技にユウコは吹き出しお金大事っすよと言うとそうねとミリアもそれに賛同した。
まあ、貧乏だから払うお金なんかないけどねと締めくくって。
再び全力疾走で走らせると、今度は完全に固定してることもあり先ほどよりも速く走り抜けた。
つまり、一人の時より走るのが速いのだ。
まさにミリアが大好きなユウコらしい結果だった。
1度目は遅いミリアを心配して全力疾走してなかったのだ。そして2度目も不安定なミリアを心配して全力疾走できなかった。
そしてその心配がなくなった3度目はありえない速度で動いたのだ。
「これなら30秒あれば吽形の
「任せるっすよ、ギタンバッコンにしてやるっすよ」
「それを言うならギッタギタのボコボコね」
ドヤ顔で間違いを指摘するミリアにユウコはやれやれと頭を振る。
「ミリりん、ボコボコなんてはしたない言葉使ったらダメっすよ」
「……まあ良いけど」
いつものことだがユウコは間違いを認めない。彼女は感覚で喋る。そのせいで間違った言葉を言ったこと自体すでに忘れているのだ。
幼馴染のミリアはいつものパターンねとため息をついて後ろから
その後
満足の行く結果にエリオは満足したが、急にユウコがその場に倒れて涙を流した。
「どうしたんですか?」
「……お、お腹減ったっす」
「……夕飯にしますか」
その日の夕食はエリオが作ることになった。
なにせ元貴族令嬢と元フランシス第一王女、
誰も料理を作ったことがないのだ。
まあ、自分エネルギーバーでも大丈夫っすよと言うユウコの提案は却下され料理ができるエリオが担当することになった。
とは言え、彼だけにやらせるのはみんな気がひけるのか、料理を作る彼を手伝うのだが、まるでフランス料理の下ごしらえのように皮を剥くときに身をゴッソリと削り取ってしまい食材が無駄にしていた。
とりあえず、この日はエリオが作り、明日から一人一人彼が教えながら食事を作ると言うことになった。
普通ダンジョンは三日程度、長くても五日でクリアするのが普通だ。だからほとんどのチームは食事はエネルギバーですます。
ちなみに夕飯は自分とミリアには肉じゃがを作り、マリアにはシチュー、ユウコにはカレーを作った。
メインを3品目も作るのは一見すれば大変そうだが、材料は全て同じなので苦ではない。パン食のマリアと和食のミリア、たらふく食べたいユウコに配慮したのだ。
ユウコ的にはシチューをご飯にぶっ掛ければ良いじゃないっすかと言うことだが、エリオ的にはご飯にシチューをかけるのはNGなのだ。
おいしいんいと言うユウコの訴えを無視してエリオは3品目作ったのだ。
エリオの夕食も肉じゃがでミリアと一緒なのが許せなかったユウコがエリオから肉じゃがを奪い一人で2品目の食事を食べていた。
もちろん全部食べた後に、残っていたシチューを奪いご飯にぶっかけてたいらげたのは言うまでもない。
ユウコの食事量を鑑みて、もう一度食料の計算し直さないととエリオは再び頭を悩ませた。
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