第8話
エリオの言葉に勇気づけられ、ミリアは拳をギュッと握りしめた。
「よし、攻略できるなら、へこんでる場合じゃないわよね」
「そうっすね、自分もこんなところで死ぬなんてイヤっす」
「わたくしも、もっと神に祈りを捧げたいので死ねませんわ」
他の二人も折れそうになる心をエリオの言葉で、なんとかつなぎとめる事ができた。
とは言え、エリオ次第で、いつ心が折れてもおかしくない状態である。だが、彼はそんなことはお構いなしに心を折にきた。
それはこの先にある地獄を乗り越える為に必要なことだった。
「みんなの気持ちは分かった。ただ、この攻略は命をかけることになるけど覚悟は良い?
「だって戻れないなら行くしかないでしょ。ここでミイラになる気はないわよ」
「自分も餓死して死ぬなんてやっすよ」
ミイラや餓死という言葉マリアはそんなにアンデッドになりたいんですかと笑うと二人共ミイラになったら私が浄化してあげますからと二人に向かい十字を切った。
「ひどっ」
「酷いっすね」
マリアは袖で顔を隠して笑う。二人の対応が予想が良い面白かったのだ。そんなマリアを見るのはミリア達も初めてだった。
死が間近にある状態でミリアはマリアと本当に心が通じ合えた気がしたのだった。
「わたくしは絶対に帰りますわ。まだ、やらなければいけないことがありますしね」
その皆の覚悟を聞きエリオはコクンと一つ
ただ、その前にここで死んだらミイラじゃなくて
まずエリオは
次に
阿形が接触し、吽形が『吽』と言ったら範囲攻撃を発動する。その一撃は回避不能で体力の99%を失う。
「ここまでが
「とりあえず、とてつもない敵だと言うのは分かったわ」
「すっすね」
「……」
「では、倒し方ですが……」
エリオは一呼吸付き自分も覚悟を決める。それは、みんなの生命を守る為に自分の命をかけてくれるみんなの為に自分も命をかけなければいけないと。
「僕が阿形の
囮になる、エリオの言葉にみんなは驚く。レベル0の彼がレベル40相当の魔物と対峙すると言うのである。
誰がどう考えても無理な話だった。
それに対してエリオは先ほど目にも留まらぬ攻防で二人を助けたことを思い出させた。
「そういえばどう言うこと? なんでエリオがあんなに動けるの」
「
「すごい、そんなものがあるのね。でも、エリオ
そう言ってから、自分たちのせいで死にそうになったのを思い出しミリアは申し訳なさそうにうつむく。
「あれは二人を助ける為の動きだったから、時間稼ぎだけなら30秒は持つよ」
「30秒……」
「危険はないのですか?」
囮になるエリオを心配してマリアは手を前で合わせて祈るように彼を見る。背は小さいがズイズイと前に出る彼女の胸の圧力でエリオはたじろぐ。
「大丈夫ですよ。それに何かあればフランシスさんの回復呪文があるしね」
圧の強いマリアにたじろぎながらも、エリオは彼女を落ち着かせる。マリアは自分の回復呪文を頼られ嬉しかったので余計に圧が強かったのだ。
「でも、30秒で
「大丈夫、倒せますよ。有栖川さんの“レイライ”と川上さんの“怪力”でね」
「本当にやれるっすか?」
「はい、その戦闘方法は後ほど訓練する時に教えますね。ただ、
「ん? どう言うこと?」
「あの門の先には
そしてあの門が開いた時にレベル40以下だと即死するとエリオは言う。
「即死……」
「だから、みんなにはレベルを40になってもらいます」
「レベル40って、それは流石に無理よ」
「すっすよ」
「……」
ミリアはその途方もない数字に開いた口が塞がらなくなる。レベル40以上の
1年年トップの栗山・シュウイチは既にレベル20だが、
それはC級ダンジョンの上限レベルが20の為、レベルが20になると得られる経験値が1/100位なってしまうのだ。
そして20から40の差は天と地、いや、地球と太陽ぐらいの違いがあるのだ。
「現実問題40まであげることができるの?」
その言葉にエリオは頷く、まずこのダンジョンはA級である。その為、上限レベルで獲得経験値が1/100に変動するのはレベル40からである。
つまり、31回、
「31回……。
「おおよそ24時間」
「つまり、31体倒すのに1ヶ月かかるってこと? ……無理よ倒せても食料がないわ」
ミリアは自分のバッグから、ありったけの携帯食と水を出した。栄養食のエルギーバーが5本と500mlのミネラルウォーターが3本、とても1ヶ月も持つような備蓄ではなかった。
だが、それでもエリオは大丈夫だと言う。
「食料は1ヶ月以上用意してあるから」
そう言うとエリオはマジックバッグから簡易ハウスを取り出し、ダンジョンの隅にそれを設置した。
故に
とはいえ、エリオの出した簡易ハウスは一般的なものではなかった。
「これ、Hー503型のハウスじゃない、なんでこんな高級品をエリオが持ってるの!?」
「うん、知り合いからもらったんだ。家の中に食料と水が1ヶ月分以上はあるから長期戦での食料の心配はしなくても大丈夫だよ」
このH型ハウスは何十種類もあり大きいテントみたいな物から城と言える物まである。
その中でも家型では最高峰のHー5シリーズ、そして最上位グレードである3型は金額にすれば10億円以上する。
それを学生の身分のエリオが出したのだ、ミリア達が驚かない訳がなかった。
ミリアは
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