蝉の声
蝉の声がする
短い生涯をものともせず
叫ぶように
歌うように
部屋でひとり聞いている
ただじっと動かずに
蝉の声を聞いている
息を深くする
身体がベッドに沈む感覚
まるで海の底へ静かに
沈んでいくかのように
軽く目を閉じて微睡めば
蘇る温度
思考が過去の感触に支配されていく
海水を含んだ砂に
足を取られまいと一歩下がるみたいに
目を開ける
何もない部屋の天井
投げ出した足に
静かに触れる
泥のような砂が付いていないことを
確かめるように
どこかで蝉がまたないた
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