一方そのころ帝国では
「そうか、魔王を討伐して奴は死んだか。」
祥二を見張らせていた密偵から報告を聞き王様は満足そうに頷いた。
ここは龍磨祥二を召喚した帝国。祥二も帝国としか言ってないが正式名をアルテガ帝国という。そして帝都はシロン。その王の執務室である。
「異世界召喚は成功だったか、ただいささか時間がかかりすぎたな。」
時間がかかるのは当たり前である。広大な大陸を祥二一人で全土を回らせ。しかもどこに魔王がいるのかも分からず、『あそこにいるらしい』という噂だけで行動させたのだから。
これには祥二にもちょっと責任がある。祥二は元々仲間とか友達とか作るのが苦手なコミュ障であったからである。そして30過ぎたときには『これで俺も大魔法使いの仲間入りだな(泣)』なんて言ってたのは内緒である。
「魔王とともに死んでくれるとは・・・奴には感謝してもしきれないわ。これで余計な手間をかけなくて済むのだからのう。フハハハハ」
予定な手間とは女神が言った暗殺とか監禁といった実力行使の事である。
「さて、魔王が討伐されたことを大陸全土でお祝いをせねばならないな。そうだ!王子は今どこにいるのだ?。」
「はっ、魔王討伐の一報を受け魔王城近くより現在シロンに帰還すべく向かっております。」
祥二はあまり気にしてなかったのだが、祥二を監視していた一団から情報を受け、そのはるか後方より魔王討伐の軍団と称して帝国の第1王子が進軍していたのである。
とはいえ魔王討伐とは名ばかりの放蕩三昧の旅であったのだが・・・。
だがこの第1王子は顔とスタイルは抜群にいい。魔王討伐達成の広告塔としては完璧である。
「よし!王子が帰還次第、すぐに魔王討伐の祭りを盛大にするぞ!。準備を進めておかねばならないな。ご苦労だったな、下がっていいぞ。」
「かしこまりました。」
こうして祥二という異世界から召喚された勇者の存在はアルテガ帝国から忘れ去られ、魔王討伐は名実ともに第1王子の物となったのである。
そしてこの出来事を観察していた女神テネレッツァは、心底残念そうにため息を吐いていたのは誰も知らない。
そして10年後〔ヴェラヴィータ〕より人族が絶滅したのであった。
原因は過去の7人の聖女(セブンシスターズ)を生贄にした結界の暴走が1年後に起こりアルモン大陸の魔力が枯渇。大陸の全土で異常気象が起こり帝都シロンは巨大な湖の底に沈んでしまったのである。大陸内の他の地でも年中竜巻が吹き荒れる地があったり、雨が降り続ける地があったり、砂漠化して灼熱化した地があったり、氷に閉ざされた地があったりと人が絶滅するまで時間は掛からなかったのである。
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