子供の戦争3




「玲那ちゃん、驚いてるかしら」

ショコラの言葉に、ブレッドが微妙な表情を向けた。楽しげな口ぶりだったショコラは、ブレッドのその表情にクエスチョンを浮かべる。

「あら、どうしたの?」

「いや、いいのかなぁと思ってよ」

「何がよ」

ブレッドはタバコを灰皿に押し付けた。まだ半分以上残っていた。

「いいと思うけど?玲那ちゃんがいれば冴ちゃんも学校に行くし、学校に行けば世界が広がるじゃない」

「そりゃわかるけどよ、あいつにだって都合ってもんがあるだろ」

「玲那ちゃん?玲那ちゃんも学校で話し相手が出来て一石二鳥だと思うけど」

「いや、あいつ友達いるだろ」

ブレッドの言葉に、ショコラは「飲み込めない」という顔をする。

「玲那ちゃんって学校に友達いるの?私学校じゃいつも一人なのかと思って……」

「何だよお前知らなかったのか。何か西村とかいう奴のことよく話してんぞ。確か同じクラスだったと思うけど」

ショコラは思わず口を押さえる。余計なことをしてしまった自覚が出て来たようだ。

「ああほら、あいつだよ。お前ちょっと前に北野が事故りそうになったとこ見たろ。その時北野に声かけてた奴がたぶんそうだ」

「あっ!あら~……。私やっちゃった?」

ショコラは、今年の一月に目撃した看板の落下事故のことを思い出した。パチンコ店の看板が歩道に落下して、それに玲那が巻き込まれそうになっていた。その時、確かにツインテールの女の子が玲那に声をかけていたのだ。

「良かれと思ってやったんだけど」

「せめて別のクラスだったらなぁ」

「ああ……。どうしよう」

そこへコーヒーカップを片手にムースがやって来た。ショコラの隣のデスクに座る。

「何の話だい?」

「パンナコッタがやらかした話」

目で問うてくるムースに、ショコラはポソポソと顛末を説明し始めた。



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