でたらめな愛のうた3



「でかい……」

「でかいね」

「大きいですね」

小洒落た家具や雑貨が置いてある店に入った三人。

入口のすぐ側にいた店員を問い詰めて衣装ケース売り場へ案内させると、さっそく商品を物色し始めた。が、

「これは……贈り物としてどうなのだ?」

「蓮太郎君部屋にあんまり物置かないって言ってたよ」

「持ち運ぶのにも苦労しそうですね」

当たり前だが衣装ケースは大きい。そもそも贈り物にするような代物ではない。先程まで玲那の意見にノリノリだった二人も、いざ現実を目の前にすると「これは無いな」という雰囲気を漂わせていた。

「少し待っていろ。今別の案を考える」

ピンクの花柄の衣装ケースの前で、顎に手をあて考え込む玲那。そんな玲那にならって後ろの二人も顎に手をあてた。

「そうだ、時計などいかがですか」

しばらくしてシフォンが閃いたとばかりに言った。しかしすかさず冴が反論する。

「蓮太郎君が時計してるの見たことないよ」

「なら尚更いい案じゃないか」

「スマホがあれば時計なんかいらないだろう?」

「フォーマルな場所では必要になってくるだろう。あれでも一応社会人なんだから」

二人のやり取りを見て玲那は少しの間考えていたが、「よし」と言ってシフォンを指差した。

「Z、貴様の案採用だ!」

「ありがたきお言葉」

「ちぇー」

「そうと決まれば今すぐ時計を売っている店に向かうぞ!」

玲那を先頭に駆け出した彼らを、店内の客達が引き気味に見ていた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る