でたらめな愛のうた2




午前十時。休日ということもあってか、ショッピングモール街はこの時間でも家族連れなどで賑わっていた。ここに、そんなオシャレな町並みに似合わない三人組が立っている。

「一時間で帰るぞ」

相変わらず高校の制服姿の玲那が言った。

「そんなこと言わずに楽しもうぜ。そうだ、プリクラ撮ろうよプリクラ」

相変わらずくたびれたジーンズとパーカー姿の冴が答える。

「北野様はお前と違ってお忙しいんだ。迷惑をかけるな」

相変わらず白衣を羽織ったシフォンが冴を睨みつけた。

背後であっかんべーする冴とそれに小言を言うシフォンを無視して、玲那は辺りを見回す。先程冴にも言ったが、玲那だって蓮太郎の趣味を知っているわけではない。むしろ冴の方がよく知っているくらいだろう。これからどうしようか悩む。

「こいつらは当てにできぬしな……」

「何?何か言ったかい玲那ちゃん?」

「北野様、ご用がありましたら是非私に」

「ええい貴様等静かにしていろ。気が散る」

まとわり付く二人をシッシと手で追い払い、玲那は再び考える。

やはり無難なものは季節物か。ちょうど春が訪れようとしているところだ。春にあると便利な何かがいいかもしれない。春といえば卒業、入学、進級……いや、相手は社会人だ。もっと他に……季節の変わり目……衣更えか?

「そうだ!衣更えだ!」

「「衣更え?」」

お互いの頬と顎を引っ張りあっていた冴とシフォンが振り返る。玲那は腰に手をあて自信満々で言った。

「春といえば衣更え!衣装ケースを贈ろう!」 

「なるほど、そりゃ名案だ!」

「さすがです北野様!」

「そうと決まれば家具が売っている店を探すぞ!」

玲那を先頭に駆け出した彼らを、通行人が引き気味に見ていた。




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