第23話 勇者

知識欲を満たした次の日。予定通り王女様の護衛になり後ろについているのだが誰にも文句を言われなかった。


常に暗部らしき人たちに監視されているが。


それよりもだ、此方に向けて感じる感情は嫌悪だろうか。王女様は気にしてそうにないが何かあるのか?



そのまま城を歩き続け、魔術の結界がはられている扉を開けて、王城の地下深くまで繋がっている螺旋階段を降りていくと少年であろう声質の怒声が聞こえてくる。


警備の女性騎士に会釈してから進むと15人程の少年と少女がいた。


話しかけているのは王と第一王子に教会の関係者か。


感情的になっている少年以外周りにいる騎士たちに萎縮していて話を聞く所では無さそうだな。


王は此方に気づいたのか我等を睨んでからもう一度話しかける。


「異界から召喚されし勇者よ。我が国を邪悪な魔族どもから守ってくれ。」


「そんな事を言われても....」


「俺たちに戦う力はないぞ」


周りにいた騎士が言葉遣いにイラついていたが行動に起こさないのは勇者の重要性を知っているからなのか。


だが、どんな理由であれ王への侮辱と捉えられてもおかしくない行為に関して感情を制御しているのは優秀な証拠だろう。


それから落ち着いて来た異世界人に創造神の加護と言う話をすると


「よっしゃ。チートだぜ。チート」


「ハーレムだぜー」


騒ぎ出し、異世界人のリーダーらしき人が落ち着かせそのまま明らかに改変されている世界情勢に魔族の凶悪さを伝えていくと


「そんな事許せない」


「おい、隼人。俺も戦うぜ」


すごい盛り上がっているがアホではないのか?と思ったが薄く精神に干渉している魔法が発動させられている。


多少興奮するような効果だけだが、優秀な話術を持つ人が使うと素晴らしい扇動術になる。


更に言うならほとんど嘘だ。最初の創造神の加護の内容からな。創造神なんぞ存在しない。


大抵の異世界人たちが流されるように戦う意思を決めた後、教会の関係者が持って来ていた鑑定の宝玉で才能を見ていく。


あの鑑定の宝玉と言われているものも龍脈の流れを分析している魔道具か。今の段階では龍脈を解析した人物の方が気になるな。


そこまで見てから勇者達に興味が失せたので、王女様と召喚の部屋を退出する。


「どうだった?」


螺旋階段を登りながら聞かれたので率直な感想をいう。


「そうですね。持っている魔力量、身体能力は何も鍛えていない人間にしては逸脱していましたが今のままではそれほど戦力にはならないでしょう。」


「そこまでわかったの?」


「ええ。特殊な眼を持っていますので。しかし、興味深い人が数人おりました」


そういうと、王女様は仮面越しに我の目を覗いてから


「どういう面で?」


「技術です。私が知らない技術を持っている。もしくは優れている能力者を見つけましたので。」


話しながら螺旋階段をのぼり私室に戻ってから紅茶を楽しみ、半刻ほど休憩したあと王女様と魔術で遊ぶ。


「貴方の実力を試させて。」


そう言ってから部屋の絵画の様な魔道具に魔力を込めて作った結界と空間拡張の魔法陣が部屋に浮かび軽い要塞とかした部屋で王女様と向かい合う。


「なるほど。これなら多少本気を出しても大丈夫でしょう。」


小さいとはいえ龍脈もあるしな。そう言ってから我は火を手に作り出し、龍の爪のような鋭い斬撃を飛ばす。


それが始まりの合図だった。


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