第22話 予想外

龍神視点


フードと変声用ピエロ仮面を被り城に忍び込んだ後、結界を割らずに勇者達の顔を見にいくのは不可能だと判断して、せめてもと思い禁書庫に向かったのは良いのだが我が知らない術式などもあり長時間禁書庫に篭りすぎた。


そして、運が悪く、同じくおそらく隠れて禁書庫に来たであろう第三王女と蜂会ってしまった。


だって我が本気ではないにせよ構築していた結界を解除して来るとは思はないじゃん。


現在、金色の長髪に眠そうな瞳が特徴の王女様と目を合わせて静止している。


向こうはあまり驚いていないように見えるが常習犯なのであればいつもとの結界の違いにも気付いていたからかもしれない。


忍び込んでいた我が言うのもなんだがもしそうなら誰かがいると気付いてて来るのもどうかと思う。


さて、我は龍神である。最強と自負する我はこの場から逃げるのは負けを認めるに等しい為却下だ。


我の権能の性質的にもな。まずは話してみるか。メイとファルベラとの経験を生かしながら


「こんばんは。お嬢さん。」


「.......何故ここにいるの?」


それはこちらも気になっているのだが。


「調べ物ですかね」


「.....そう。その本は死霊術の祖アルテュルが作り、使っていた魔導書で呪いがある。何故読めるの?」


変な子だな。我よりも死霊術の方が気になるとは。


「貴方に教える義理はありません。」


「.....それはいけない。教えて。」


「頑固ですね。頑固な女性は嫌われますよ。」


「...失礼。私は魅力的な女性。男達もメロメロ。」


何故そこまでポジティブなんだ?


「では取引を致しましょう。質問に答える代わりに一つお願いを聞いていただきたい」


「...私に出来る事ならいいよ」


「私を勇者の教育係に雇って頂きたい」


「......それは出来ない。私の護衛ならいいよ」


「成る程。ではそれでよろしくお願いします」


「.....ん。今からよろしく」


今すぐなのは断りたかったが勇者を近くで観察するには仕方がないか。


メイとどこかに行ったファルベラには使い魔でも送ればいい。


何故か少し悪寒がしたが無視して了承の意味を込めて頷く。


王女は我が頷いたのを見た後に慣れたように空間拡張された禁書庫を歩いて本を机に持ってくる。


目の前の王女が結界術に関する書物を見ているのを覗き込みながら、自分の身分を考える。


できる限り冒険者という身分をバラしたくはない。というかこの仮面とローブを脱ぎたくない。


だがそれでは見た目が怪しすぎるが背に腹は変えられない。


王女に頼るしかないのだが、そこはかとなく頼りない。仮面越しとはいえ、視線か何かを感じたのか睨まれたがすぐに本に視線を戻す。


我もその視線に釣られるように本に目を落とすと中々に面白い事が書かれていた。


理論だけとはいえ占術と結界、極大魔法石などを組み合わせて都市結界を作る計画は面白い。


占術で予知して反射結界を使い反射、飽和しそうになれば魔線で繋いだ極大魔法石で迎撃。これを一つの魔法として発動させる。


魔力も相手からの攻撃がなければ結界が発動していない状態なので理論上は魔術師十五人で発動可能だ。


効率だけ考えれば素晴らしいが何故実際使われておらず禁書庫に存在するのだ?


「何故、このような結界術が使われておらず、禁書扱いされているのですか?」


「.....倫理に反するから。後は教会がうるさい。」


理解ができなかったので王女様に詳しく聞くと、この魔法の核である占術の使い手の自意識を消して道具のように魔法陣に組み込むのがダメらしい。


禁呪指定されているのは大抵人を触媒にするものらしい。それでも世界の犠牲は良くて人はいけないというのは我には理解できなかったが。


「私にはわからない感覚ですね。人の繁栄を大切にするのならば少数を犠牲に大人数を生かすのは基本ではないのですか?」


「....そう。でも、人間の感情は難しい。」


それから一時間ほど禁書庫で過ごした後


「.....部屋に戻るけど、明日まではバレないで。」


「禁書庫で過ごしますのでお構いなく。」


我にとってここはとても心地が良い。我は力技でもきるからこんなことはやろうとしないし、そもそも思わない。が知恵と工夫を見るのは面白い。

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