第20話 女神達3

乳白色の幻想的の城の中、共有スペースでは絶世の美女達が思い思いに過ごしている。

植物を愛でるもの、本を読むもの、ボードゲームをするもの、そして不機嫌に魔力を撒き散らしているもの。

他のものはそれに気づいていながらも、いつも誰かの機嫌が悪いため無視している。実力行使は盟約によって禁止されているからだ。


神は、基本的に短期だ。したがって、煽られたりすると感情の昂りによって魔力操作が乱れて、魔力が吹き荒れる。

それによって、新種の鉱物や、それに連なる新種の魔物が生まれたが誰も気にしない。

だが、今回はいつもと違い様子が可笑しい。機嫌の悪い聖霊は魔神を睨みつけて忌々しそうに話し出す。


「魔神よ。何故龍神を見つけたのに妾達に報告しなかった?妾達が神域に帰らずにここに居る理由の大半がこの理由ぞ?」


この言葉を聞いた魔神以外の亜神達は手を止めて、聖霊の言葉を飲み込みその意味を理解したのか魔神に詰め寄る。

当の魔神は本を読みながら、なんでもないように答えた。


「ええ、少し監視していました。まさか人族の方と一緒に居られるとは思ってませんでしたので。貴方達も嘘の情報をつかまされたくないでしょう?」


そう言われてしまうと何も言えない。もとより、聖霊も伊達に長年生きているわけではない。魔神がストーカー、もとい監視をしているのに気づいた時から、契約に穴があることに気づき問い詰めても逃げられることは分かっていた。


この世界では、勝者が正義だ。誰が何を言おうと、騙し合いで負けて魔神が勝ったただそれだけ。負けた聖霊が魔神より弱いのがいけない。それは聖霊も理性ではわかっている。分かっているが、それを許せるかと問われれば否と答えるだろう。


負けた自分と魔神に苛立ってる聖霊を見ながらエンシェントドワーフは面倒くさそうな表情をしながら手っ取り早く魔神に問いかける。


「で、今龍神はどこにいるんだい?分かったのならアタイはもう帰るよ。頭までお花畑のやつと一緒に暮らすのはもう懲り懲りだよ。」


「はい?私も、もう貴方のような頑固でガサツな神と一緒にいるのは嫌です。」


「頭がお花畑の自覚があったのかい。自覚があってもそれとは残念な奴だね。」


いつもの魔力のぶつかり合いが始まったが、無視して情報を聞き出す。


「今現在龍神様がいらっしゃるのは交易都市ベルリムです。」


「また始まったよ〜。僕はもう教えてもらったからもう行くね。バイバイ。」


「妾ももう行くかの。魔神よ。異界からの来訪者については時間を稼いでおいてくれ。」


そう言って、獣神は白狼となり空を駆け、聖霊は独自の転移魔法フェアリーサークルで転移する。


「もう!私も帰るから。千年は貴方の顔を見たくないわ。」


「アタイもだよ。」


そう話した後エンシェントエルフは転移魔法、エンシェントドワーフは特殊な魔石を使い、帰って行く。


それを見届けた魔神は、従者のファルのいるところに転移して行く。王都へと。

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