第42話 処刑再開
新宿のビルで爆発があった。
警察と火災調査官が捜査に当たったがガス漏れによるものとされた。
この事故による被害者はパチンコ店の経営者で都内に5件の店を所有していた。
他に金融業も営んでおり、こちらは闇のもので組織犯罪課では組織の資金源と目されていた。
被害者は組織犯罪課では組織の大幹部として認知されていた。
一連の新宿での組織員の殺害事件の一環として捜査対象になるかと思われたが、ガス漏れとの連絡に組織犯罪課は手を引こうとした、だが、火災調査官が発見した物で展開が大きく変わった。
火災調査官が発見した物は信管の部品と思われる物だったのである。
この発見により爆発の残骸と部屋が徹底的に調査され、新たな証拠が見つかった。
他の信管の部品が見つかり、又、各部屋から隠しカメラが見つかったのである。
この時点で事故から事件に切り替えられ一連の組織員殺害の継続と判断され担当が麻生が指揮する組織に変更された。
そして犯行は被害者である人物が一人になった時を狙って行われたと判断された。
麻生は念の為に公式に滝の身辺調査をさせていて24時間の監視が付いていた。
確認した処、この犯行は100%、滝によるものでは無いと断定された。
非公式にある男の身辺調査も為されていたが、その男はアメリカ本土への旅行中であった。
その男はベガスで日本人の女性と会い旅行を楽しんでいたとの報告が入った。
麻生はこの報告に逆に何か違和感を感じていた。
麻生は直ぐに彼女の会社に友達と称して連絡を取った。
彼女は有給休暇を取っていた、理由は旅行との届出で旅行先はヨーロッパと言っていたらしい。
暫く時間を置いて滝に連絡し同じ会社の彼の友達と称して連絡を取った。
彼はハワイ旅行を理由に有給休暇を取っていた。
麻生が捜査すると彼女はヨーロッパへ実際に出国していた。
彼女はヨーロッパからアメリカへベガスへ向かい彼と落ち合ったと思われた。
だが、其処までだった、アメリカにいる以上、今回の新宿爆破事件とは無関係と断定された。
そして、新宿爆破事件から一週間後、新たな事件が発生した。
同じ組織の同格の大幹部が射殺されたのである。
マンション・ビルの大幹部が所有する部屋の窓から外を見ている処を額に一発の銃弾を受けての死亡だった。
検死の結果、長距離からの狙撃、スナイパーによる狙撃だった。
検視官たちの調査で捜査範囲が絞られ該当地域の捜査が行われたが射撃地点は解らなかった。
以前の射殺事件で使われた狙撃銃と同一の物とだけは判明していた。
警察の必死の捜査にも関わらず、他の証拠も何も掴めていなかった。
「もしもし」
午前、そろそろ昼食と言う頃に書類を見ていた麻生の携帯電話がなった。
「滝だ、新宿の事件の捜査はどうなっているかはテレビでは進んでいないと言っている、一件目の爆発はまだ解らないが二件目の狙撃の方法と証拠を見つけた、捜査班を出すなら今この電話で場所を言うが、貴方だけが見たいなら今から案内する10分後に下に降りて来てくれ」
「・・・今から行きます」
「解った、下で待っていてくれ、迎えに行く」
電話が切れた。
「此れから、出掛けます、後はよろしくお願いします」
麻生は見ていた書類を整理し皆にそう言うとバッグを持って部屋を出て言った。
庁舎を出て歩道に立って暫くすると麻生の側に車が止まりドアが開いた。
助手席に乗り込んだ麻生の膝に滝が封筒を置いて、車を発進させた。
「この写真は何かしら」
封筒の中から出した写真を見て麻生が滝に尋ねた。
「50口径ライフル、照準付き望遠カメラ、遠隔操作トリガー、携帯電話だ、何処からでも発射できる」
「海外からでも出来るの???」
「電話が通じる処なら世界中の何処からでも可能だ」
「あの男のアリバイは無いと言う事ね」
「だが、あの男の関与を示す様な証拠は出ないだろう、銃の製造番号からの購入履歴、携帯電話はプリペイド、その他の部品購入履歴・・・指紋もDNAも出ないだろう」
滝は有料駐車場に車を止めて車を降り、麻生も続いて降りた。
車を降りた滝は暫く歩くと幾つもの会社が入ったビルに麻生を案内した。
二人はエレベーターに乗ると最上階で降りた。
滝は屋上へ通じるドアのノブを回すと鍵が掛かっていたがポケットから工具を取り出すと30秒程で鍵を開けてドアを開けて麻生を屋上へ連れて行った。
滝は屋上を歩き片隅に麻生を連れて行くと眼下を指さした。
「あそこに見えるのが狙撃されたビルだ」
「どれがそうなのかが解らないわ」
「回りのビルよりも少し、二階程高く白いビルだ」
「あぁ、あのビルね・・・遠いわね」
「ああ、大体800メートル程かな」
「凄く遠いわね、本当にここなの、誰が撃ったの」
滝は後ろを向いて屋上に設けられた設備用の建物の窓枠に足を掛けると飛び上がり建物の屋上に手を掛けて腕の力で身体を持ち上げて上に登った。
麻生は滝の運動能力に驚いた。
滝は上で寝そべり下に手を伸ばした。
「俺の手に捕まって下さい」
「いいわ、貴方を信じるわ」
麻生は上に登る事を拒否した。
「駄目ですよ、自分の目で見なきゃね・・・後悔先に立たずですよ」
「・・・解ったわよ」
麻生が少し飛び上がり滝の手に捕まった。
滝は右手一本で軽々と麻生を持ち上げそのまま立たせた。
麻生は滝の怪力にまたまた驚かされ、滝の腕を見詰めた。
「凄い力ね」
「貴方のスタイルが良いからですよ」
「あら、お世辞でも嬉しいわ」
滝は隅の幌に覆われた物を指差した。
「あれがそうです」
滝は近づき留め具を外すとゆっくりと幌を捲った。
そこには滝が見せた写真の狙撃銃と装置があった。
「銃口の側にあるのが観測用のカメラで倍率が非常に高いでしょう、スコープの後ろにあるのが照準用のカメラで引き金の側にあるのがトリガーを引く装置と受信装置と送信装置でしょう」
「こんな物で世界中の何処からでも狙撃が出来るのね」
「そうです」
二人は来た時とは逆の順路でビルを出ると近くの喫茶店に入った。
「それで、犯人はこの装置と銃を回収に来るのかしらね」
「当然、そのはずだったでしょうが、もう来ませんね、我々が見つけましたからね」
「どう言う意味・・・あぁ、此処を監視しているカメラが回りの何処かにある訳ね」
「と、思いますね、私ならそのカメラに動作感知機を付けて、此処に照準を合わせて起きます」
「それで貴方は何処にそのカメラを設置したの、と聞いても教えてはくれないわね」
「そうですね」
滝はカメラを設置していないと否定をしなかった。
「それで奴はどうしていますか」
「それがアメリカに行ったままで、まだ返って来ない」
「さぁ~、本当にアメリカに居ますかね」
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