第33話 回想-別荘
<回想-別荘>-----#033
「何故、アレックスに射撃を勧められたのを断ったのかね」
「だってあんなに大きな銃を見た事もなかったのに撃つなんてとんでもなかったわ」
「そうか~あの頃はまだクアムで始めて拳銃を撃っただけだったね」
「ええ、それも22口径がやっとだったのよ」
「そうだったね、ところで口径の意味を覚えているかね」
「あら、試験なの・・・ええと・・・銃身の内径か弾丸の直径の事で100分の幾つか・・・ね、50口径は100分の50だから1インチの半分の0.5インチつまり12.7ミリね、一般に38とか357とか言われる物は9ミリの事・・・そんなところかしら・・・どう合格?」
「勿論、合格・・・M2と言う銃を知っていますか」
「まだ実物を見た事はないけど資料は読んだわ・・・確か・・・何とかブローニングと言う人の設計で1930年代にアメリカ軍に採用された重機関銃・・・だったかしら」
「素晴らしい、ジョン・ブローニングの設計で1933年に正式採用されたものだよ」
「この銃の資料をネットで読んだ時に1933年の物が今でも世界中で使われている事に驚いたのを覚えているわ」
「僕もそう思ったよ、そのだけ素晴らしい設計と言う事だね、ところで撃ってみたいと思ったかい?」
「怖い・・・けど撃ってみたいわ、あなたは撃った事あるの」
「昔、グアムの今とは違う場所に屋外射撃場があって、そこで撃ったんだ・・・凄かったよ、その時が50口径の初回だったというのもあるがね」
「そう言えばベガスの後に行った山小屋で50口径の練習をしたけど、あの山小屋は貴方の物でしたね・・・でもとても綺麗でしたが良く行くのですか」
「派遣の清掃会社にお願いし、鍵はセキュリティー会社にお願いしています」
「それで銃は違う場所に保管してあるのですか」
「そうです・・・秘密の保管場所を・・・とも考えたのですが、費用対効果で止めにしました」
「あの時、聞き忘れたのですが、何故あんなに離れた処に隠すのですか」
「貴方ならどうしますか」
「うーん・・・、・・・、隠し部屋を作る・か、隠し戸棚を作る・・・か、でもそんな事は当然考えましたよね」
「費用対効果と言いましたよ、自分で作れば堅固な作り、難しい作りは無理です限りが有ります・・・専門の方に依頼すれば完全に秘密では無くなります、となれば自分だけで作れて見つかり難い物に成ります、人には好奇心が有ります、セキュリティー、清掃を他人に依頼していれば何時かはその存在がばれてしまいます」
「あれは単純なのに良く出来ていますね、あれは厚いアルミ製でよね~、何処で手に入れたのですか、怪しまれますよね」
「あれは、棺桶なのですよ」
「成程、棺桶ね~考えましたね、あの強度が有れば上を人が歩いても凹んだりしないし雨にも強いし最適ですね、でも毎回、掘り出し、埋め戻すのが難点ですね」
「それは準備運動と思えば良いのです」
「銃と弾はどうやって手に入れたのですか」
「貴方ならどうしますか」
「そうですね・・・日本人・・・外国人には正式に売って貰えませんから・・・う~ん、やはり闇ですかね」
「そうです、そすが自由主義の国です、金に糸目を着けなければどんな弾でも銃でも手に入ります」
「M2でもですか」
「買おうと思った事が無いので正確には判りませんが、多分、手に入るでしょう・・・でも政府の何処かの眼に止まるのではないでしょうか」
「FBI、NSAとかですか」
「そうです」
「それじゃ駄目ね、どころで私の射撃の腕前はどうですか」
「昔、何処かの誰かがスナイパーには女性の方が向いていると言ったらしいのですが、貴方の遠距離射撃を見て私も・・・そうかも、と思いましたね」
「それは褒めてくれているの」
「勿論、一発目は10メートルも外れましたけどね、それでも生まれて初めて50口径を撃ったにしては上手いものですね、反動に驚きも無かったようですしね」
「それは違うは・・・驚きが大き過ぎて反応できなかったの~」
「な~んだ、そうか、でもそれから修正の速さと集弾率は凄いものでしたよ」
「ありがとう、先生が良いからよ」
「僕もありがとう、と返しておこう」
「貴方の最初はどうだったの」
「僕の最初の50口径はあのグアムの射撃場でね、何度も撃っていたから、あとは距離が遠いだけだったね」
「最初は何メートル外れたの」
「5メートル位かな」
「やっぱり凄いわね、私だって銃については少しは知識が増したのよ、私の10メートルと貴方の5メートルでは全然違うと思うわ、貴方の場合は銃の特性に照準を合わせる前でしょ、私の場合は貴方が合わせた後だもの」
「凄いね、君は・・・良く現状を理解していたね、それとも後から解ったのかな」
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