第24話 出入国調査

麻生は新宿の事件の新たな容疑者を見つけた。

麻生が電話した次の日に部下に行かせず麻生本人が入国管理局に行った。

グアムへは三人で行ったがアベックを見たのは麻生だけだと言う事も理由だった。

だが普通は特徴を言って探させるべきであったが何かの感が働き自分で行った。

入国管理局に朝の9時には着き挨拶の後、早速個室に入り画面に見入った。

最初に捜査方法を習ったが至極簡単だった。

その作業は至って単純なものだ、マウスの左ボタンを一回押すと次の出国者の顔写真が表示される、次から次に表示される。

昔は比較的探し易かった、組織の者は若い者や仲間に写真を見られた時の事を考えて「強面(こわもて)」に見える様な写真を使っていた。

ところが最近は逆に優しく弱くより一般人に見える様な写真を使っている。

組織の人間に関わった時にその事を聞いたところ、如何に騙せるかを競い合っている風潮がある・・・との事だった。

麻生の部下の話として如何にも組織員と思える写真の人物を調べると一部上場の名の知られた会社社員だった・・・事が多くあり、やり難い時代になったと嘆いていた。

麻生は試しに眼つきの悪い若い男の写真に出会い持って来た警察PCでDB(データベース)で調べてみた、その青年は眼つきが悪いだけでスーツ姿でネクタイをしていて馴染んでいたので組織員では無いと予想していた・・・DBではやはり一般企業のサラリーマンだった。

もう一人選んでみた、その青年は眼鏡を掛けていたが同じく眼つき悪く、服装はTシャツだった。

DBでは会社員なのだが組織の末端企業と目されている会社だった。

麻生は今回の作業の成果の一つとして「眼つきに服装を合わせると確立が上がる」を得た。

部下に一つ土産が出来たと思った。

だが、何百と見たが未だに「滝」も「アベックの二人」も見つけていなかった。

合った直後と違って今は「何故あのアベックに目を止めたか」麻生には解っていた。

あの二人の様に女が若く容姿端麗で男が少し年上のベアは結構いる、特にグアムでは多く見かけた。

そんな二人の女を見ると「どう良い女の私がこんな男を選んでいるのよ、この男はお金持ちよ、何か文句ある」と言う考えが麻生の頭に浮かぶのだ。

男の方からは「ハンサムでも無い俺がこんな良い女を連れている、そうさ俺は金持ちだ、どうだ羨ましいだろう」と麻生の頭に浮かぶ。

不思議な事に美男美女のペアの場合は自分の容姿に気づかず相手の容姿を誇ってる様に感じた、「どう、私・僕の相手はこんなにハンサム・美人だろ・でしょ」と浮かんだ。

勿論、麻生の勝手な考えであって心を読んだ訳では無い、テレパシー能力など無い。

彼女は幼い頃からマンウォッチングと彼女が呼ぶ遊びをして来た。

誰かを見て頭に相手の気持ちが浮かぶとその考えが合っているかを確認して来た。

考えだけでは無い、話ている相手が自分を嫌っていると感じると徹底的にその人の事を調べ少しずつ時間を掛けて接近し本音を言わせる機会を作った。

そしてある日「私、最初貴方に会った頃は大嫌いだったのよ」と言わせ、彼女は心の中で「やった」と叫んでいたが表情には当然出さず「そうなの~今は???」と質問し「大親友じゃない」と答えが帰ると満足する様な詐欺師とも言える策士だった。

刑事になるべくしてなったとも言えた。

そんな事を思い出しながら見ている時にようやくアベックの女の方を見つけた。

警察のDBではヒットせず免許書でヒットした。

住所、氏名、年齢は解ったがそこまでだった。

そこで近頃の若者は大体どれかSNSをやっていると思い当たってみると全てに登録が有り写真や情報から「あれ」と思い始め読み進めるうちに「違う」と言う思いに駆られ始めた。

結局、違うと言う結論に達した、思えばアベックの彼女は美人ではあるが特徴と言う物が無かった、強いて似ている芸能人を上げるとすれば若い頃の高島礼子さんであろう。

立ち去る時の特徴あるあの躍動感は写真では解らないのだ。

麻生はまた単純な写真送りの作業に戻って行った。


次に目に止まったのは男で「何処かで見た」が感想だった。

免許書から先に当たり住所、氏名、年齢を掴んだ。

次に警察のDBに当たるとヒットした、但し犯罪者では無く被害者だった。

そう、銀座の銃撃戦で亡くなった母子の夫・父だった。

だが、その頃の写真とグアムで会った男は別人とも言えるほど違っていた。

麻生の長年の刑事としての感が雰囲気だけで目に止まったと言えた。

銀座の事件直後の彼とは全くの別人だった。

あの時の死んだ魚の様な眼つきでは無かった。

そして立ち去る時の躍動感のある歩き方、美人の彼女が出来たからか???、いやそれだけでは無いはずだと麻生は思った。

今ははっきりと何故沢山の人達がいる中であの二人に目を止めたのか。

漂わせる雰囲気があの戦争兵士、殺人者、暗殺者、スナイパーの滝と似ていたのだ。

そして彼女も漂わせる雰囲気が自信に満ち溢れ例え相手が男でも暴力に屈しない・・・と言う雰囲気、自信に満ちていた、それは麻生自身が醸し出していて他人から言われ続けている・・・から良く解るのだ。

二人のそんな雰囲気は何処から来るのだろうか・・・麻生は尋常では無い興味が沸いていた。

女の方の正体と滝の事は後回しにする・・・と決断し男に会いに行こう・・・と決めた。

銀座の事件の復讐が動機と考えれば新宿の事件の第一容疑者を見つけた事になるからだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る