第22話 出入国管理局
麻生も仕事の合間、いや仕事中にも「何故グアムであのアベックの二人に目が行ったのか」を考えていた。
そして思いだした。ただそれは何故目が行ったか・・・では無かった。
二人が立ち去る時の仕草、動きだ、南国にあって気怠さが微塵も無かったのだ。
他のアベック、いや他の人、自分も含め滝とあの二人だけが春か秋の晴天の日本にでも居る様に、そう颯爽としていたのである。
二人が立ち去る時の違和感が最初に目にした時に気づいたのであろうか。
二人は東洋系と言うだけで日本人ではないのだろうか・・・いや麻生の刑事としての感が日本人だと言っていた。
麻生は東京地方裁判所に電話し秘書から当番裁判官と繋がった。
「麻生さん、噂の警視庁の麻生さんですか」
「どの様な噂か解りかねますが警視庁の麻生で御座います」
「大変良い噂ですよ、何か私でお役に立てますか」
「ありがとうございます、法務省・出入国管理局から情報開示をお願いしたいのですが、具体的に申しますと、ここ一カ月間のグアムへの渡航者とグアムからの入国者の顔と住所・氏名の閲覧・転記の依頼です」
「失礼ですが管理局に対して初めてですか」
「出国停止依頼の経験はあるのですが閲覧依頼は初めてです」
「閲覧理由をお聞きしましょう」
「はい、先日グアムでの事件の検証に当地を訪問してのおりに銀座及び新宿での数件の事件の被疑者、いえ参考人に会いました、ですが国外ですのでいかんともし難く本国での居住地と帰国の有無を知りたいと思いまして・・・参考人の氏名が必要でしょうか」
「解りました、グアムは大変渡航者が多いですが氏名がお分かりの様ですので一日で良いですか・・・あーと氏名の必要はありません、私の好奇心には必要ですが」
「申し訳ありませんが三日でお願いします、ついでと言っては不謹慎ですが四課担当の顔見知りがいる可能性もありますので全員の顔だけでも確認したいのです」
「解りました、五日差し上げます、存分に検証して下さい、本日午後には準備しておきます、宜しいですか」
「ありがとうございます、十分です、では失礼いたします」
「流石に噂通りの方ですね、お役に立てて光栄です、失礼いたします」
出入国管理は国外への出入りだから何となく外務省の管轄と思われがちであるが、法務省の局である。
麻生の真の目的はアベックの帰国確認と住所・氏名を始めとした情報収集だった、無論、滝の現住所も知っておきたかったが・・・無駄だと思っていた。
滝がそう易々と所在地を明かす事は無いはずだからだ、兎に角用心深い男と理解していた。
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