第17話 彼女の初陣

当のアベックの会話も二人のものだった。

その頃には女性も男によって体も精神も鍛えられていた。

今回のグアムへも銃の練習とダイビングの練習に来ていた。

「女性一人と男性二人の組は警察でしょう・・・だけどもう一人の男性は何者???」

「滝と言う男だ・・・世界を股にかけた殺し屋、日本ではやくざの用心棒だよ」

この時の彼女の返事は何か引っかかるものだった。

「ああぁそーそーなの、あの人が滝さん、滝さん・・・なの・・・」

あくまでもこの女性は育ちが良い・・・最近は行動が少々荒っぽい・・・が。


こんな事があった。

Kマートで買い物をしていてお互いのほしい物を離れて買っていると男の耳に離れた処から男の「ギャー」「イテー」と叫び声が聞こえた。

男が何事かと近づいて見ると一人の男が鼻から血を流しもう一人の男は明らかに右足が折れていた、そして離れた処に彼女が蹲り口を手で押さえて震えていた。

三人のガードマンが居て一人が女性を慰め「英語が出来るか」と確認していた。

他の二人のガードマンは犯罪者を扱う様にぞんざいに怪我をした二人を扱いそれでも救急車を呼んでいた。

男は女性に近づき対応していたガードマンに流暢な英語で名前と宿泊先ホテルを告げ二人はその場を離れ買い物を続けてホテルに戻った。

そこからが笑い話の始まりだった。

部屋に入った彼女の第一声が「あの人たちってもっと強いと思ったのに全然・・・詰まんないの」

だった。

「さーて、君の実践初体験を最初からじっくり聞こうか」

「へっへっへっー、最初はねー、お嬢さん日本人、一人・・・って声を掛けられたの。」


「日本人ですけど、彼氏と一緒です・・・残念でした」

「貧弱な弱っちぃ男でしょ・・・そんな男ほっといて僕らと遊ぼうよー」

「止した方が良いですよ、彼ってとても強いから、早く離れた方が良いですよ」

「冗談でしょ、一人でしょ、ちょっと位強くてもこっちは二人、二人だよ」

「二人でも、貴方たちじゃーね、だって私より弱いもの」

「なにー優しくしてりゃーいい気になりやがって、良いから連れて行こうぜ」

と一人が手を彼女に伸ばした。

彼女は伸ばした手の勢いを利用して男を前に転がし脛に踵を叩きつけ骨を折った。

見ていたもう一人が彼女に向かって行ったが彼女は怯えて蹲る様に片足を上げ男の顔に叩きつけ男の鼻を折り血を出させた。

見ていた見物人には彼女は全くの被害者にしか見えなかった。

なんと言っても隅で蹲り震える彼女を見れば誰も意図的とも思わなかった・・・見事な演技だった。

話を聞いた男から出た言葉は

「全く、君は可愛い悪魔だね」

「そー私の目標は羊の皮を被った狼よ」

「で、第一戦の感想は」

「あんなのは戦いに入らないわ・・・前哨戦にもならない・・・気を引き締めるわ、どこか隙がまだあるのね・・・反省、反省」

「うーん、君は偉い、言う事無し・・・さー食事をしてダイビングに行こうか」

「はーい」

イタイル抜群の体を筋肉質の体にぶつけて行った。

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