第8話 一匹狼の男-#2

一ヶ月が過ぎ、警察報道に何の変化も見られず、行き詰まっている様だった。

只、進展と言えば、襲った側が中国か韓国人とインド系らしいと言う事だけたった。

滝たち4人は、山荘を出る事にした、勿論、滝の指示だ。

滝は山荘を出るに当たって、滞在の痕跡を全て消す事を命じ、使った物で今後不要と判断した物を裏に穴を掘らせ埋めさせた。

後始末は軍手を嵌めて行わせたりと徹底しており、三人は一言の不平も言わず従った。

4人で車を覆っていた木と草を四方に別けて捨て、車を50メートル位づつ動かし、タイヤの跡を消しながらアスファルト道路に出た、アスファルト道路の泥も勿論、綺麗に消した。

滝の運転で4人は都心へ戻って行った。

通る町並みに異様な風景は見られない、警官の人数も日常に戻った様だった。

只まだ都内ではない、今後の様子で行動予定の変更も考えられた。

三人は、滝が一緒にいる性か落ち着いており久しぶりのビル群にはしゃいでいた。


新宿に着き、三人を下ろし、滝は長期可能な駐車場を捜し1年半分の料金を払った。

急に会社から家に帰らずの海外出張になった為と説明し、勿体無いし疲れますと愚痴を溢した。その後、離れたところでレンタカーを借り三人の横に車を止めた。

その後、三人を一人ずつ連れ、いろいろなデパートの紳士服売り場、下着、靴、シャツを求めた。

三人に任せれば、組織員丸出しの服装になるのは、解かっていたからであった。

これで、見た目は、まじめな4人のサラリーマンの完成だ。

その後、公衆電話を探した、携帯電話の普及で公衆電話が中々見つからなかった。

ある公園の横で見つかり、滝が耳当ての部分を外し機器を付けた。

三人には用途の説明はしてある、相手に通じ機器のランプが赤くなったら「すみません、間違えました」と言う事になっている、警察が盗聴しているからだ。

幹部が本部に掛けた、ランプは光らない、組長を呼び出して貰い金の送金を依頼した。

すんなり受けられ口座に振り込まれる事になった、金額は3千万円だった。

一度もランプが点灯しなかった、滝は逆に疑惑を感じた。

振込み口座は滝が幾つか持っている偽名の口座だった、入金専用で残高はゼロだ。

途中で手ごろな若者を見つけ、カードを渡し100万の引出しを頼み手数料の10万を渡した。

十分な距離を置いて銀行を見つめて、若者が入って手続きを始めると、何処からともなくそれと解かる男たちが現れ銀行を取り囲んだ。

四人は、躊躇なく静かに車を走らせ現場を晴れた、組織のボスも官憲に協力している事は確実となった。

滝はその後、千駄ヶ谷に車を止め、暫く姿を消した。

消すに当たり、四人の上半身の写真を取って行った。

三人は音楽を聴きなから菓子を食べ只待った。

2時間ほど経って、車の横に、太めの中年が立って窓ガラスを叩いた。

窓を開けると、聞きなれた滝の声で「待たせましたね」と言った。

滝だがまるで別人だった。

三人にそれぞれパスポートと免許証を渡し、「これからは、一郎、二郎、三郎、四郎ではなくそれぞれの名前を頭に刻んだ下さい。

お互いの自己紹介もお忘れなく」と言って車を発進させた。

三人は自分の名前を覚えるのに必死だ。

「本当に貴方は滝さんですか」と新しい名前を覚えたと納得した幹部が聞いた

「声は変えていないでしょう」

幹部も疑うのも無理はない、滝の姿が一変していた。

顔の頬が垂れ丸みが有り、目も垂れている、体型に至っては、間違いなくデブに分類される容姿だった。

変装は、首、頭、手など細部にまで及んでいた。

実は声も変える事ができたが、自分を認識して貰い警戒を解いて貰う為、敢て声は変えていなかった。

「まるで別人です」と若い二人も言った

「三人とも、良い傾向ですよ、言葉使いがサラリーマンに近づきましたね」

「おお」と幹部が自分で自分の言葉に驚いた。

「もっと、もっと意識して直して下さい」

「はい」と三人は素直に返事を返した。

滝は首都高速に乗り、常磐自動車道に入り、茨城県で北関東自動車道へ入り、一般道に戻ると大洗港に着いた。

三人は旅行を楽しみ滝に一切の質問をしない。

一度、幹部が問いかけようとしただけで、死体も又死ぬような目付きをされ他の二人も氷付いた。

それからは、一切その話題に触れない事が三人の暗黙の了解になった。

滝は他の話題であれば、普通と変わらないし、普通の人よりも言葉使いも丁寧で親切だった。

但し、相変わらず、三人の内、誰かが荒れた言葉使いをすると、部屋に戻ってから、外から解らない部分を選んで、半殺しの目にあった。

四人だけの場合には、その場で強い張り手が飛んで来た。

勿論ほほではなく胸なのだが、息が一瞬も二瞬も止まる位物凄しものだった。

三人は序々に犬が調教されるように滝に従順になって行った。

大湊でレンタ・カーを返却し、フェリーに乗って北海道の苫小牧に向かった。

その頃には、三人は余暇の過ごし方に慣れてしまい、全然退屈している様子はなかった。

レンタカーを借り苫小牧から稚内港国際旅客ターミナルに向かった。

樺太への小旅行へ出かけるのだ、二日の後、樺太に向かった。4日間の凍えながらも、日本人には非常に珍しい体験に三人は本当に喜んで、三人の商社マンを見事に演じていた。

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