第6話 甘味処...喫茶店?
良かった.
先客が何人か居るが,席は空いている.
クーラーが効いていて涼しい.
人の良さそうなおばあさんがカウンター席に案内してくれた.
でもなんだか,いわゆる甘味処という感じはしない.なぜだろう.
メニューを見てすぐに心を決める.
あんみつと麦茶を注文した.
少し相性が悪い気もするが仕方ない.
変わろうと決めたからには,緑茶ではなく麦茶にするのだ.
珍しいことに,カウンター席の目の前にはコーヒーを淹れるためのサイフォンが並んでいる.
先客がコーヒーを注文していたようだ.
おじいさんがアルコールランプにマッチで火をつける.
お湯がガラス管を登っていく様子から目を離せない.
お湯が茶色に変わってゆく.店の中にコーヒーの香りが漂い始める.
正しい選択はコーヒーだったか.即判断による後悔が多いなぁ.
おしゃれな喫茶店だ.
しばらくコーヒーが出来る様子を見て甘味を待つ.
長年使い古されたであろうカウンターや椅子は素晴らしく居心地が良い.
あんみつと麦茶が届いた.
麦茶を飲み干す.ああ,悪くない,いやこれは美味い.
サービスの水を我慢しただけあって格別だ.
あんみつには寒天とみつまめ,そして白玉とフルーツが山盛りだ.
真っ赤なサクランボを最後に残して一気に食べる.欲望には勝てない.
とても甘い.暑い散歩の疲れを労ってくれるようだ.
サクランボの茎を口の中で結べるか挑戦してみる.これが意外と難しい.
先客達に変な目で見られている気がするが無視だ.
…結局できなかった.迷信なんて気にしないぞ.
麦茶のお代わりを貰い,一息つく.
グラスの表面についた水滴が,集まって,コースターに流れ落ちて,消えていく.
残った氷がカランと音を立てて,響く.
ああ,夏っぽいな.
会計をして店を出る.大満足だ.多幸感に包まれる.
祖父母の優しさのような店だった.
高台に向けて進み始める.時刻はとっくに四時を過ぎている.
感傷に浸るには良い時間だ.
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