第5話 到着

トンネルを一気に駆け抜けた.

トンネル内のジメジメした匂いは一瞬で過ぎ去った.

抜けた先は少し開けていて,さっきまでの道より明るい.

なんだか気持ちがいい.

この気持ちのままに甘いものを食べたら,今までの後悔など吹き飛ぶだろう.

ほんの少し足取りが軽くなる.


遠くの方に木に一部が隠れた,錆びた案内の看板が見えた.

甘味処はちょっとした公園の敷地内にあるらしい.

峠はこの道のもっと先で,公園より奥にあるようだ.


後ろから車が走ってきた.

ここに来るまで車が通らなかったので,私は道の真ん中を歩いていた.

サッと端に寄る.


車にはおばあさんと孫が乗っていた.

私を追い越した車は道の先で右折したようだ.

あそこが公園の入り口かな.

二人は公園で遊ぶのだろうか,甘味処に行くのだろうか.


祖父母の優しさは親とは少し違う気がする.

親よりもっと大きな何かで包んでくれるようで温かい.

人生の長さの差なのだろうか.

地元のばあさんに会いたくなる.


そんなことを考えているうちに公園の入り口にたどり着いた.

ゆっくりと敷地に入ってゆく.

駐車場は広くて何台か車が止まっていた.

甘味を食しに来たのか,単に休憩しているだけなのか.

公園とは名ばかりで目立った遊具は無い.

広場があるだけだ.

ただ,市の景色が良く見えそうな小さな高台がある.

甘味を食した後に行ってみ

思っていたより小さい建物だ.

暖簾と木の引き戸が良い雰囲気を醸し出している.

取っ手に手を伸ばして,中に入る.

よう.


甘味処は古民家を改装したような見た目をしていた.

甘いにおいがした.時間は三時半前頃.丁度良い時間だ,

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