第14話 宝箱の中身

エデン少年はギルドへ向かった。討伐報酬の受け取りと宝箱から見つかった物の鑑定の為だ。


宝箱の中身は見つけた本人の所有化が認められる一方、パーティで発見した場合当然、山分けする必要性が発生する。それ故にギルドの介入と査定、鑑定が一般的であり手数料さえ払えば誰でも気軽に使えるサービスの一環だ。


「これ鑑定お願いできますかー?」


アパネス……もといアパルティが休職中で代わりを務めるヒアナさん。


烈火の如き猛々しい赤髪が特徴的で粗暴な性格に見え一見怖そうだが僕には優しいので大好きだ。ほかの冒険者達には少し雑な気がするけど多分気のせいだろう。服装はアパネスさんと同じギルド職員の制服なのだが覆っても隠しきれない巨乳が世の男達を魅了して止まない。そんな彼女はギルドでアパネスさんに次ぐ人気嬢の1人だ。


「おう!エデンか!よく来たな!どれどれ?お?ん?この卵を査定したらいいんだな?任せとけ!」


そうなのだ。レ・ビュガリゼムを倒した後にドロップした宝箱の中身は……最近少し見なれてきた【たまご】だったのだ。


だから僕は少し残念だった。しかしその中身や効果などは外からの見た目では知ることが出来ない。だからこその鑑定なのだ。


「はい!お願いします!」


「じゃあ……15分位で終わると思うからそっちのテーブルで待ってな!」


ヒアナさんはそう言うと鑑定ルームに入っていった。鑑定ルームにはどうも鑑定専用の設備が整っている様で時々部屋の隙間が光ったり凄い音が聞こえるのだ。中でどんな鑑定が行われているかは秘匿情報らしい。


僕はヒアナさんの言いつけ通り待つことにした。するとプチが念話で話しかけてきた。


──あるじー?そういえば……産卵Mって使ったの?


「うん。使ってみたよ。でも……上手く発動しなかったんだよね……。」


そうなのだ。産卵Mを使ったのだがやはり宿屋や街中では発動すらしなかった。ビュガリゼム洞窟では発動自体はしたのだが……どうやら素材が必要の様で素材選択画面から先に進むことが出来なかった。産卵Mって一体何なんだ?あと……高級そうな必要素材が必要って書いてあったけど集まるのかな?そんなことを考えていた時だった。


「キャーーーー!」


突然耳を劈く様な悲鳴が聞こえた。それはヒアナが入っていった部屋の方からだった。


エデン少年は自分のせいだろうと思い、いけない事とは分かってはいたがその部屋に急いで入っていった。


──すると中には1人の女性と……1つのたまご──僕が鑑定依頼した物だ。


「ヒアナさん大丈夫ですか!?」


「あ、悪ぃな……ちょっとビックリしてな。柄にも無く乙女みてぇな声が出ちまった。」


ふぅ…凄い悲鳴だった割には大したことなさそうだな。


「柄にも無くって事は無いですよ?ヒアナさんお綺麗ですし。」


「……おいよせよぉ。照れるじゃねぇか。まぁそれにしてもだなぁ……。これ……かなりやべぇ品だぞ?」


「ヤバい?どうヤバいんですか?」


「あぁ…エデンはマジックボックスって知ってっか?」


「え?まぁ一応知ってはいます。」


「この卵はな?その伝説級のマジックボックスだ。」


「えぇ!?そ、そうなんですか?卵なのに?」


「まぁな。ただそこは別にそんなに驚くところじゃねぇ。」


…そうだよな。悲鳴をあげるほどでは無い。じゃあなんなんだろう。


「……これ…ま……が入ってる……」


「えっ?何が入ってるんですか?」


「だから!魔王が入ってんの!」


「!?!?」


言葉にならない。魔王?あの?伝説級の魔族の王?それってかなりやばいんじゃ?


「ほ、ほ、本当に?」


「うん。これ。鑑定結果だよ。」


僕はヒアナさんに羊皮紙を渡された。鑑定の機械にかけると鑑定結果が羊皮紙に印字される。この世界では真っ白な紙は珍しく高価な為一般的には羊皮紙が用いられている。


そこにはこう書かれていた。


★鑑定結果★


魔王のたまご ランク???

魔王レ・ビュガリゼムが死に際に産み落とした次代の魔王。産まれると急速に成長し3日で成人する。初めて見た者を親と認め全身全霊をもって守護する。性別不明。孵化まであと1日。


ちょーーーいまって!魔王?魔王って何!?も、もしかしてあの骸骨さんってそんなに強いひとだったの?え?でもでも…プチのプチファイアとピクティルの回復Zでやっつけちゃったしそんなに強敵って程じゃなかった気がするんだけど……うん。やっぱ誰かが魔王を倒して僕らがちゃっかり貰っちゃったんだろうな。そうに違いない!なんか僕達得ばっかしちゃってるなぁ…ラッキー!


エデン少年はまた盛大に勘違いをするのだった。


僕達はヒアナさんと別れ宿屋へと戻る 。


「…ねぇ。プチ?もしかして…たまごの中身の事知ってた?」


「うん。何となく知ってたよ。魔族って卵で次代に繋ぐらしいからね。」


「魔王は特別なのでございます。必ず次代へ繋ぐと聞いております。」


えっ……マジか。魔王って居なくならないんだ。


「魔王を完全消滅させるのって難しいんだよ。卵を消してもまたどこかで卵が産まれるからね。」


──卵を壊すって選択肢は無いみたいだ。孵化まであと1日……。それまでにどうするか決めなきゃだな。


僕は卵をベッドの脇に置くとそのまま深い眠りについたのだった。

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