第13話 レディアの正体
「ふぅん。これがお宝かぁ。ねぇ…ちょっと開けてみてもいい?」
「どうぞー?あるじのだから気にしないで開けなよ!」
「勿論に御座います。ワタクシ達の戦果は全て主様の戦果。戦利品も当然全て主様の物。ご自由になさってください。」
僕は嬉々として宝箱をグルリと1周する。何の変哲もない宝箱。ただ少し違うのは今までのドロップアイテムとは違って巨大な骸骨の魔物から落ちたって事。
それが余計にエデンをワクワクさせていた。
「じゃ、じゃあ…お言葉に甘えて……開けるよ?……せぇの!」
──え!?ま、まさか……
エデン少年は宝箱の中身に驚愕しましたが少し残念でもありました。
さて宝箱の中身はまた後のお楽しみという事に……
一方レディアside───
──ふん。ようやく……か。ティレンスの仇討ち?バカバカしい。
レディアはアパルティ、アーティと別れたあととある場所へと向かっていた。
屋根伝いに街を抜けたった1人で向かう場所。そこはまさかのビュガリゼム洞窟。彼女の正体は一体……。
レディアは普段着のまま武器すら持たぬ。それはビュガリゼム洞窟に到底相応しくない姿だったが、そんな違和感だらけの彼女を見かけた者も気にかけた者も誰もいなかった。索敵の達人であっても彼女を捉える事は叶わない。魔王参謀総長…それが彼女の本当の姿だった。
──長かった。漸くウチの出番やわ。
すっかりと口調も変わったレディア。ズンズンと洞窟を歩く中、誰とも何とも遭遇せぬままとうとう30階層──主人のいる部屋へと到着する。
「我が主。計画が実行される刻が来たようですわ。長い刻を待たせてすんまへんなぁ。ほな。行きましょか。」
巨大な扉の前で跪き頭を垂れて話しかける。関西弁風ではあるが出来る限り丁寧に。
──ん?おかしいなあ?返事が返って来おへんやん。いつもやったら…「あぁ。」とか「そうやな。」とか一応返事してくれるんに。長い刻を寝すぎて脳みそいってもーたか?まぁここにいてもしゃーないな。中に入ろか。
レディアは主の部屋へと入ることにした。
「レビュガリゼム様。失礼するでー?」
いつも繋げて読んで怒られる名前もいつも通り言ったのに罵声も聞こえない。
──ほんま。寝すぎて死んでもーたとかちゃうやんな?
レディアが部屋へ入ると驚愕の事態に遭遇する。
──へ?はぁ?何なんあれ???あんな……太陽みたいな爆発……ちぃとでも当たったら死んでまうやろ!
丁度焔龍プチが放ったメガフレアがビュガリゼム洞窟の壁に当たった瞬間だった。
レディアは咄嗟に身を隠した。
──主様。逃げや!ありゃ勝てる相手ちゃうわ!
だが……レ・ビュガリゼムは相対したまま逃げることも出来ず蹂躙される事となる。
回復Z回復Z回復Z回復Z回復Z………
──はぁ?なんなんあれ。過剰回復ちゅうか…魔族に回復とか極悪非道極まりないやん。悪魔か!あいつは!更に回復Zちゅうやつの回復量や。レビュガリゼム様ってあれで一応魔王やからな?HP100000越えやで?なのにあの回復1回で10000は持っていかれてる。10回。たった10回で死ぬやん。ありえん。ありえへんわ。
「ふん!そんなの知ったこっちゃないよーだ。じゃあるじの為に死んで貰うよー!アナイアレイション!」
ふぇ?……それって究極殲滅魔法……?主様逃げて……あーあ。当たってもーた。ドゴゴゴゴーーーーーーーンって聞こえた後に……チュッ!って音が聞こえたで?あぁ聞こえましたとも。主様の体が消滅した音……やな?まぁあない爆発あった割には洞窟が無事なのも不思議やな。まぁレビュガリゼム様の依代みたいなもんやったから頑丈やったんかな?ま、どっちでもええか。それにしても弱ってるはとは言え……魔王を倒したアイツらバケモンやなぁ?どれ……顔を拝んで……
──!?!?
ふぁ!?エ、エデン君?あのエデン君かいな……あの飛ぶトカゲ……焔龍やゆーてたけどほんまやったんやな……。あっちのちっこい妖精もイカれた回復量やったし……こりゃ侮れんわ。ウチも早々に逃げんと二次災害で殺られてまうわ。ほな。サイナラ。
レディアは闇夜に消えるようにすぅーっと姿を消したのだった。
「あるじー?気づいてた?」
「うん……一応…ね?」
索敵の得意なエデンはレディアの存在に気づいていた。だが攻撃してこないうちは攻撃しない様にしようと決めていた。
だって……一応あのアパルティの母?だからだ。こんな場所ににいるのが彼女の本当の母なのかは分からない。だけど……本当のお母さんだった場合兄に続き母も失う事になるのだ。それも僕の手によって。そんな事出来るわけ無いじゃないか。例え魔族であっても魔物であっても敵対しない限りは戦わない。そう決めたエデン少年だった。
エデンがビュガリゼム洞窟を出る頃。アパルティとアーティは必死でエデンとレディアの行方を捜索していた。彼らがビュガリゼム洞窟で遭遇していたとは想像すらも出来ないのだが。
「エデンくん。どこ行っちゃったのかな?もしかして……」
「まぁ……うん。ちょっと困ってたとは思うけど……な?パルティアが……彼を夫にしたいだなんて言い出すから。」
「だってぇ……。お父様も思うでしょ?彼……まだ幼いけれど礼儀は正しいし、強いし、優しいし……。シュッテンドルなんかとは大違いよ!でも……エデン君が逃げるほど嫌がってるなら……私……。」
「ははは。お前がそんなに悩むなんてな?実は本当の意味で【好き】なんじゃないのか?」
「…なっ!?そ、そんなこと無い……です。」
それっきり父娘の会話は途切れる。
──そ、そんな訳ないじゃない……私とエデン君は10近くも歳が離れてるのよ?私みたいなおばさんじゃエデン君が可哀想………。
ツゥ……。
頬には一筋の涙が流れる。
「……パルティア。儂にはな?ティレンスにしたってパルティアにしたって同じ子供なんだ。ティレンスのことはお父さんに任せてパルティアは幸せになったって良いんだぞ?」
「………。」
私はお父さんのその言葉に返す言葉が無かった。本当にそう出来るならどれだけ幸せか。死んだ兄を想い今まで生きてきたけど……兄は本当に仇討ちを望んでいるのか?と考える時がある。
我が兄ティレンスは王家に殺された。それは紛うことなき事実。
第3王女の暗殺……。それが我がリィミア家の悲願。だが……本当に第3王女がやったのか?……兄ティレンスはどうやって殺されたの?。謎が多すぎて足踏み状態にあった。しかしシュッテンドルの再接触があるのなら話は別だ。
──見てなさい。王族……王家なんて私が潰してやるんだから。我が兄の仇……。そのためにもエデン君には頑張ってもらわなくっちゃ。
ん?それにしてもお母様はどちらに行かれたのかしら……?
パルティアは自らの頬をパンパンと叩き気合いを入れるのだった。
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