第4話 ダンジョン脱出
「よっし!漸く出口に着いたぁ~!お疲れ様!プチ!」
「きゅっきゅー!」
僕の周りをグルグルと旋回し3度回ると僕の胸にポフッと優しく体当たりしてきた。
無論本気で体当たりされたらエデンの体は木っ端微塵だろう。だがプチの加減具合にエデンは気づくことは無い。
あれからエデンはプチが瀕死にした狼や亀の魔物のトドメを必死にさしてレベルアップするために頑張った。
プチファイアの練習は思うように進まなかったけど指の先にポワッとした暖かい何かが灯るまではいけた。魔力が溜まる感じと言えばいいのか…まぁ進展があったと喜ぶべきだろう。
「じゃあ討伐の報告をするためにギルドへ行こっか!」
「きゅいーー!」
僕達はダンジョンをでたそのままの足でギルドへと向かった。
そこには……僕が冒険者として登録した時の担当のお姉さん──アパネスが受付に立っていた。
このギルドには常時2名の受付のスタッフが常駐している。討伐の失敗や救助、緊急クエストの発行など24時間の対応が必須な案件があるからだ。
そしてこの時間──彼女がいることは珍しかった。このギルドの受付嬢の中でも1番人気であるアパネスは冒険者達のいちばん多い時間帯──即ち午前中から昼にかけての出勤が多いのだ。
現在午後10時──通常ならば閑散としたギルド内が何故か賑やかなのもアパネスがいる事が要因の一つだろう。
「こんばんはー!討伐報告に来ましたー!」
「!?……えぇ!?エデン君?ほ、本当にエデン君?亡霊とかじゃないよね!?だ、だ、大丈夫?」
「え?はい。見ての通り元気いっぱいですけど?どうしたんですか?アパネスさん。」
「どうしたもこうしたも……ま、まぁいいわ。無事ならそれで。で?討伐報告ね。見せてちょうだい。」
僕はギルドカードをアパネスさんに提示した。
この世界のギルドカードはなかなか有能で討伐した種類、数、サイズ、時間などの詳細を保存する機能を有している。古代の技術らしくその内容は詳しくわかってはいないが有用な機能を持ったカードとして古代より使われ続けているらしい。
「……え?……は?」
「どうしたんですか?」
「いや……ちょっとこれは……」
どうしたんだろう。アパネスさんが狼狽えている。そして右往左往した挙句頭を抱えて……ハッとした顔をした。何かを思いついたようだ。
アパネスは猛ダッシュでギルマスのいる扉の向こうへと消えていった。
扉の向こうにはギルマスがいるだろうはずなのだが……ドッタンバッタン激しい音がし始めた。
そしてバンッ!と大きな扉を開ける音がしたかと思ったらギルマスが血相を変えて僕の前に来た。
「お、おい!エデンってぇのはおめぇか?」
「あ、はい!ぼ、僕のことですけど……どうしたんですか?」
「いやちょっと気になることがあってな?これ……見てみな?」
そうやって出されたカードの内容。そこにはとんでもないことが書かれていた──?
名前 エデン
種族 人間
ジョブ テイマー
スキル 産卵S+
レベル 2
体力 12
力 8
耐久 4
素早さ 15
知力 18
運 21
テイムモンスター : プチ(焔龍)
んー……よくわかんないけどとりあえずレベルが2に上がってる!やったぁ!
あ!あと……ジョブが発生してるるるるる!それと産卵Sが産卵S+ってなってる?うーん……Sってなんなんだろうな……大きさ?強さ?やっぱりまだ分からないなぁ。
それにしても別に特別気にする内容じゃない気がするんだけど……?あ!もしかして弱すぎる?冒険者を首になるの?それだけはやめて欲しい。僕の長年の夢。冒険者。やっとなれた職業だ。辞める訳にはいかないんだ!
「あ、あの!お願いです!僕を首にしないでください!お願いします!!!」
「……は?いやいや。勘違いすんじゃねぇよ。誰が首にするって言った?ほれ。ここだ。ここを見てみろ。」
ギルマスから指を刺された場所を見る。
→テイムモンスター : プチ(焔龍)
ん?プチ?あぁ…プチの事が書いてあるのか。焔龍?何それ。僕の知ってる名前じゃないなぁ?強いのかな?でも小さいトカゲみたいなもんだし……プチが出すプチファイアは強力だけどレベッカの魔法の方が大きいしな。強いなんてありえない。そうだ。そのはずだ。
「あ。はい。見ました。」
「おいおい。はい見ましたじゃねぇよ。焔龍をテイムしたのか?伝説級のバケモンだぞ?どこに匿ってるんだ?隠してもためになんねぇぞ?今なら俺もついて行ってやるから……見せてみろよ。」
僕のポケットの中に隠れていたプチがモゾモゾっと動き出す。
「きゅっいーーー!」
プチがポケットの中から飛び出した。
「はぁ?これ?これが焔龍なのか?がはははははは!こんな小さな龍がいてたまるかよぉ!やっぱカードのエラーだな。まぁ稀にあるんだよ。本当に稀になんだけどな?悪かったよ。呼び止めちまったな。」
貶されたのが分かったのかプチは威嚇しギルマスの周囲を飛び始める。これは不味いな。
「プチ!おいで!」
「きゅっいーーー!」
僕の声に反応してプチがポケットの中に戻ってくる。ポケットの中でモゾモゾと動く。ほんのり暖かいその温かみが僕を少しだけ癒してくれた気がした。
「あ!ご迷惑お掛けしました!これ今回の討伐報酬です!」
「ありがとうございま………えぇ!!!こ、この量……」
「はい。金貨120枚です。テイムモンスターの功績も含まれて……ですがシルバーゴーレムの討伐が大きく金貨80枚。その他ミニフェンリル、アダマンタイトなどなど……諸々合わせて金貨120枚となりました。」
「……あはは。凄い!プチすごいよ!今日はご馳走だね!」
「きゅっいーーーー!きゅいきゅい!」
プチは主の喜びを分かち合うようにポケットから飛び出してきて体の周りをクルクルと旋回しはじめ、僕達は食事の為に夜の街へと繰り出すのだった。
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