第3話 アレックスの悪行
エデン達がダンジョンでシルバーゴーレムを倒し帰路につこうとした時──アレックス達はというと……
「はぁはぁ……レベッカ!もうシルバーゴーレムおって来ねぇよな?ゴミムシでもちゃんと囮が出来るってことか?がはははは!俺様ってば神様に好かれてるぅー!うぃーー!」
ダンジョンの外に脱出して安堵の表情を浮かべ歓喜の声を上げていたのだ。
エデンが死んだかもしれないのに呑気なものである。しかしそれもそのはず。これまで何人もの駆け出し冒険者達が彼の毒牙にかかって死んでいたのだ。
冒険者はクエスト中の生死については犯罪に問われにくい。魔物が突然襲いかかってくることもあれば罠に引っかかって死ぬ者もいるからだ。
エデンも無論そのように処理するはずだった。
「……えっとまた?……仲間の1人が魔物の犠牲になったと。それからシルバーゴーレムを発見したのですね?マッピングした物などお持ちでしょうか?」
ギルド職員のアパネスだ。長い髪はウェーブがかかり茶色い髪質は絹のように繊細かつ艶めかしい。眼鏡女子の彼女は隠れ巨乳だがダボッとした服を好むため知る人は少ない。
「キャッ!」
だがアレックスはその隠れ巨乳を知るひとりである。
「アレックスさん!や、やめてください!ギルマス呼びますよ!!」
「ちょっとくらい良いだろ?減るもんじゃないんだしがははははは!なぁレベッカ?」
そう言ってレベッカの胸も揉みしだく。
──ちっ。このど助平が!しかも下手くそで痛てぇんだよ!ちっとは成長しろ!この短小ホーケー野郎!とレベッカは思っているが声には出さず。
「あん……。うん。そうだよね。減るもんじゃないんだからオッパイくらい揉ませてあげたら?」
「……くっ……アジール様~」
アパネスはサッとアレックスの手を払うと受付から離れ奥の扉の中へとは入っていった。
暫くすると─
ドンッ!
奥の扉が勢い良く開き大男が出てきた。
「おうおう。またお前さんか。アパネスを虐めるのもいい加減にしろよ?てめえの冒険者資格を剥奪したっていいんだぜぇ?」
「はんっ!んな事言ったって本当に剥奪する気なんてねぇくせに!俺様がこのギルドを去ったらAランクパーティは1つだけになっちまうじゃねぇか?あぁん?それでもいいのか?お前らはAランクの俺様にへーこら機嫌でもとってれば良いんだよ!」
ビキビキビキビキ……
アジールの顔に青筋が浮かび上がる。アジールは元々Sランク冒険者だったがグリーンドラゴンの討伐に失敗し利き足を失った。それが引き金となり冒険者は引退。それまでの功績を考慮され新規に出来たギルドのギルドマスターに抜擢されたのだ。
だが元々冒険者だったからこそAランクの冒険者の重要性も知っているし冒険者の素行の悪さもある程度は理解がある。
しかしこれは我慢の限界だった。
「ちっ……おめぇ……次はねぇからな?もしも次こんな事があったら…そんときゃ……骨も残さねぇ!分かったかこのクズが!」
「がはははは!まぁ次があればな?がははははは!」
アレックスはくるりときびすを返してギルドを後にした。
「あ!シルバーゴーレム付近のマッピングおまちしてますからねーーー!」
健気にも仕事を遂行するアパネス。アレックスはふてぶてしくも振り返ることすら無く手をヒラヒラと振って返事をした。
そしてアレックス達は拠点としていた《龍の雫》という宿屋に到着した。
「おっかりなさいませぇ~~……んげっ。」
狐の獣人であるコリンがあからさまに声色を下げ顔を顰めた。
「おっ?コリンちゃーん!」
アレックスはコリンを見つけると猛ダッシュでその距離を縮めようとした。
この《龍の雫》の内部には吹き抜け部分があり2階へと直接移動することも可能だ。まぁ3m以上飛べることが最低条件なのだが。
その事を勿論知っているコリンはアレックスの急接近に伴い2階の通路へと飛び上がった。ヒラリとスカートが捲れピンクのパンツが丸見えになっているだろうが仕方が無い。
あれにハグされるよりはマシだからだ。ついでに言うとキスもされるし乳ももまれる。スキンシップと本人はいうが女とあらば手当たり次第の獣。それがアレックスという男だ。しかしAランクの冒険者という強みを全面に押し出し誰もが注意出来ないでいた。それは《龍の雫》のマスターも同じであり本人が自己防衛するしか無いのだ。
「まぁた逃げられたかぁ~がははは!まぁ今日は気分が良い!おい!酒だ!エールを持ってこい!」
今日もアレックスの執拗なセクハラといつもと同じ冒険話が深夜まで永遠と続くのだ。
──そろそろ潮時かもね。
パーティメンバーですらアレックスを見限ろうとしている事に本人は気付く素振りすら無い。この男アレックスは顔がいいだけのただの脳筋。腹黒く冒険者としての出世は早かったがただそれだけ。今後成長する見込みも少なくギルマスからも睨まれている。失脚するのは時間の問題。
「さぁ!飲むぞーーー!ふぅーーー!」
今日も能天気に仕事終わりのエールを飲み干したアレックスであった。
──うーん。プチファイアってこんなに強いんだ?僕は魔法は使えないしあんまり見たこともないんだよなー。
レベッカの使っていたファイアボールは派手で大きさも大きかったけど…ゴブリン程度しか倒せなかったし……。
まぁ考えるだけ無駄だよね!プチと一緒にまずはここから出なきゃだ。
「プチ?疲れてないかい?」
「きゅっきゅーい!」
「ん?そうなの?じゃあこのまま行こう!」
「きゅーーーー!」
プチの言葉は分からないけれど何となく意思疎通が出来るんだから不思議だ。僕が生み出したものだから当然ちゃ当然なのかもしれないけどね。
あ!あそこにオークがいる!フゴフゴ言ってるから見つけやすい魔物なんだけど力が強くて厄介なんだよね…。ここは避けて通ろうか……
「きゅーーーい!」
プチが先手必勝でプチファイアを放つ。オークもそれに気づき回避行動をとったけれどオークは避けきれずにプチファイアは腕に掠めた。
え?すご!!
当たった瞬間オークの体は70%ほど吹き飛んでこんがりとした匂いが立ち込める。
「プチって強いんだね!オークも一瞬で倒しちゃった……」
「きゅー?」
「ううん。いいんだ……。いやちょっと僕もレベルアップしたいなーって思っただけだからさ…」
「……きゅー………」
プチが申し訳なさそうな顔で今までパタパタと元気よく羽ばたいていた翼をダランと下げて悲しそうな表情になる。
「そんな気にしないでいいよ?僕が弱いのがいけないんだから……」
「きゅー!きゅっきゅー!」
「あはは……慰めてくれるの?ありがとう。まぁレベルもアップって言ってもトドメをさせる術も無いんだけどね?」
「きゅー?」
「そうなんだ。剣術も魔法もからっきしでね。僕もプチみたいにプチファイア使ってみたいんだけど……まぁ無理だよね…あはは…。」
「きゅ!きゅー!きゅきゅ!」
「ええ?出来るようになるかもって?」
「きゅーーーー!」
「そうなの?じゃあ僕も頑張ってみるね!プチ先生よろしくお願いします!えへへ。」
「きゅーきゅーきゅー!」
僕はダンジョンを抜けるまでの間プチによって瀕死にされた魔物達を狩りレベルアップ兼プチファイアの練習をするのだった。
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