第35話 門外不出の彼氏くん
象牙の塔。学者や芸術家が世間から離れて研究や創作を打ち込む場。
僕は一時期、本の中に高潔に描かれた、いにしえの賢人に心惹かれて、そういった場、現代では大学が当てはまると考えて、読書と並行して入学以来、真面目に講義を受け、休んだことなど一度もなかった。
「めでたしめでたし」
それがどうだ、今では手足を拘束されて、カバンに仕込んでいた幼児向け絵本の読み聞かせ。
低級の読み物などと不遜なことを言うつもりはないけれど、深雪さんのゆったりとした口調と相反するかのように、名状しがたい
ああ、頭がぼうっとする。お母さんが生きてた時は、こうして寝かせてくれたっけ…………
***
おやすみ♡いつもなら写真撮ったりするけど、もうずっと二人っきりだから撮る必要もないんだよね。
それにしばらくは目を覚まさないはずだから、一緒に寝ちゃおっと♡
宗太君、運動ぜんぜんしないのに、意外とがたいも悪くなくて、やっぱり男の子なんだなぁ~って思うよね。
今はまだ、えっちな事はしないよ。だってもうすぐ宗太君の方から私の事を好きになってくれるはずだもん!
愛の育みを一方的にしちゃうのはやっぱり悲しいよね。だから今は宗太君のぬくもりを味わうだけで我慢我慢。
それにしてもさぁ、お姉ちゃんホント何なの?
宗太君の妹になる?好きになった?
マジでふざけんなよ。
小説家だからって頭おかしいでしょ。宗太君は私のお婿さんなんだから、アンタにとっては義弟でしょ?ていうか年を考えろ。
そんな意味不明な思考回路だからアパートから追い出されるんだよ、バカが。
いくら私たちが羨ましいからって、わけ分からなすぎでしょ。二度と宗太君に近づくな非モテ年増が。
「そ、宗太君♡」
抱きついてるー!?かわいいい!!好きい!!!
ああもう絶対離さないから。お金の事なんて二の次。ずぅーっとこうしていようね♡
…………そのためにもやっぱり排除しなきゃだよね?ああ、ごめんね宗太君。やっぱり少し離れなきゃ。寝ている間に全て片付けておくから安心してね。
もう何も心配しなくていいんだよ。私が全部メイドとしても司書としても、それ以上に彼女として、管理してあげるから。
ゆくゆくは結婚だもんね。明るい未来が途絶えたなんて、どんなにお金を払ってもらっても償えない。
だから、私が邪魔者を消さないとダメなんだよ。宗太君なら分かってくれるよね?
私はもう高校生じゃない。邪魔だけはさせない。
好きな人を死なせたりなんて…………
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