第28話 三頭政治はいずれ内乱に
「お兄ちゃん、何だか少し変わったね」
氷室姉妹を残して僕らはカフェ「カエサル」へと向かい、450円・おかわり一杯無料という良心的なブレンドコーヒーをすすることで、シリアスとはいかないまでも、あの姉妹の独特な空気感を払いのける。
そんな雰囲気の中、彩香が僕の変化を指摘するのだからお兄ちゃんビックリ。
「変わったかな?」
「うん、最初は反対だったけど、私以外の人と親しくするのがお兄ちゃんには必要だったんだよ」
「まあ、今では彩香の凄さが身に染みてるよ」
「今までは気付かなかった?」
「正直に言えば」
「知ってる」
他の兄妹もそうなのだろうが、僕は彩香がこうして微笑んでいるのが一番好きだったりする。
「彩香は何か話があったりするのかな?」
「は、話!?そ、それは無いことは無いけど……いきなりどうしたの!?」
「それはこっちのセリフなんだけど。慌てすぎだろ」
「だっていきなりお兄ちゃんがそんな事言うからじゃん!」
「別に変なこと言った覚えはないけど………女子高生がたまの休みにお兄ちゃんとショッピングモールに行くってのは比較的珍しいと思って。それで、これは何か話でもあったりするのかな~と」
「………やっぱりお兄ちゃんは変わってないや。ううん、違う。私が変わらなきゃダメなんだよね」
イマイチ話が見えないが、多感な年頃の女の子だ。
他愛もない会話を刺激剤に、何かを決心したりすることもあるのだろう。
女子が主人公の物語をあまり読んでこなかったので信憑性は保証できないので悪しからず。
「お兄ちゃん、私ね――――――」
「宗太君!遅いよ!」
「よくこんな落ち着いた場所で大声出せるな」
「これも宗太君への愛の表れだよ♡」
「恐縮です………」
「あれ~お邪魔だったかな~シスコンお兄ちゃん」
「智花さん、何かお飲みになられますか?コーヒー美味しいですよ?」
いちいち対応していては彼女の思うつぼだ。
深雪さんは天然で仕掛けてくるのに対して、智花さんは正真正銘の策略だからな。これが売れっ子新人作家のマーケティング戦略。
「ま、いっか、お兄ちゃんが楽しそうだし」
***
お姉ちゃんの言う通り、宗太君ってシスコンさんなのかな。だとしたらやっぱり初めに睨んだ通り、最大のライバルは妹ちゃんってわけかぁ。
でも何だかお姉ちゃんも宗太君のこと気に入ってるらしいし、そりゃあ、宗太君は優しくて顔も性格もカッコいいけどさ!
世界で一番好きなのは私なんだから、宗太君は絶対に私と付き合って、結婚するんだよ。うん、絶対。
***
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