第26話 聖堂

南山が見える。

叔父サンチョンが、南山にN.ソウルタワーがあると言っていたが、確か1971年に建てられたと言っていたから今、私がいる大正時代にはないのね。

でも、山が近いからこの辺も丘みたいなところがあるのかな?

ゆるたかな坂道の頂上に右側にさらに上にあがる階段がある。階段の先に建物がみえる。


とがった小尖塔が此処が聖堂であることを語っている。アーチ形の窓から光が漏れている。

でもこのゴシック聖堂はすごいな。

微妙に違う色合いの煉瓦を組み合わせて造っているのかな?建物全体に陰影がある。

それとも、これは、悪魔デーモンが醸し出す雰囲気なのかな?


この前、ジンさんたちと外食した時に、神ジンが言った。

夜宴の場所と日時がわかったと。

そして、今、その場所に来ている。

最初に教会と聞いて驚いた。

悪魔デーモンが嫌う場所だと思ったからだ。

ジンさんの話だと1898年に完成したと言う。

教会だと聞いて驚いた私にジンは、話を進めた。


「太古、人々は、太陽神を崇めた。」

「そして、太陽神を守る神々も崇めた。」

「人々は、神々を崇拝した。」

「それは、偉大なる存在に平伏せたから。」

「だが、今は、どうだ?」

「太陽神では、ない。太陽神を守る神々でもない。神になろうとした者にすがる。」

「今は、崇拝ではなく、すがっている。」

「助けて欲しいと。」

「自分も神に成りたいと。」

「では、神になりたい人間が、神に差し出した物は、何か?」


神になりたい人間が神に差し出した物?

ジンさんの質問を反復した。

直ぐに1つの者が思い浮かんだ。

私は、それを言葉にした。

「即身仏。」


「そう、神になりたい人間は、神になる代償に自身を差し出したのだ。」

私の言葉にジンさんがそう答えた。

ジンの返答で解った。

「それって、魔女になるために等価のものを差し出す事と同じことですよね。」身を乗り出して私は聞いた。


「そうだ。」

ジンさんが頷く。

「でも、神になりたい代償が自分の身体でチャラになる訳がない。身体から全ての生気を抜き取られ枯れて死んでも、まだ修行をさせられている。」

ジンの言葉に納得した。

即身仏になったものは、今もなお、修行していると聞いたことがある。

生きたまま、即身仏に成るための修行に入りその修行は、何百年経った今も行われていると。

ならば、教会で夜宴が開かれるのは、なにか納得した。


階段を上りきり、開けたところに出た。

目の前、聖堂が聳え立つ。

隣にいるジンさんが口を開いた。

「とりあえず、正面から中に入れ、インナとアンナは、入ったら直ぐに各所確認しろ。」

「俺は、外周を見てくる。」

「ハキとセジョンは、入ったらそのまま礼拝堂で待機だ。」

私たちに目配せをしてジンさんは、外周の暗闇に消えて行った。

「私たちも行こう。」

インナさんが言った。

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