第8話 迷路
「
「…
誰かが、私を呼んでいる。
頭が痛い。
何処かに頭ぶつけた?
背中に激痛が、走った。
「痛い!」
身体を逆海老反りのように反らす。
意識が、ハッキリする。
私は、身体の痛みを忘れて、飛び起きた。
「
「お姉さんは?」
辺りを見回す。
あれ?
ここは、何処だ?
自分がわかるものを視界の中に探す。
ここは…
視界に、突然、
思考が、回らない…
抑えていた感情が沸き上がる。
「
「
「ずっと、ずっと1人で、待ってたんだよ。案内板の前で。」
涙が、溢れ出した。
今まで、堪えていたものが、全て出てきた。
私は、大声を出して泣き出した。
「勝手に居なくなったのは、私だけど、気が付いてすぐに戻ったんだよ。」
泣きながら愚痴がでる。
「そしたら
また、大声を上げて泣く。
泣きながら愚痴がでる。
「大正時代のお金もないし、乾パンもミネラルウォーターも
「お腹も空いて、喉も渇いて、でも誰も知ってる人いないし…夜になって、辺りは、暗闇が広がって行くし…うっ…う…」
涙しか出てこない。
そのおかげで、私も冷静さを取り戻した。
そして、私は、寝台から起き上がり駆け出す。
「痛い!」
駆け出した私は、すぐに、その場で転んだ。
膝から血が流れ出す。
身体のあちこちが、痛い。
「
「でも、早く戻らないと!」
「お姉さん、死んじゃうかも!」
「それに、私…夢中で…舞ったけど…あの
「私…殺しちゃったのかな?」
また、涙が流れ出す。
自分の身体を見る。
至る所に
血が固まって止血していたが、私が、動き出してあちらこちらから鮮血が滲み出す。
「痛い。」
「痛いよ。」
でも、確かめに行かないと。
あの屋敷に。
私は、上半身を起こして、這いずった。
正面から
私を見ると私の前に座り込み救急箱からオキシドールを取り出し、私の至る所の傷口に順番に吹きかける。
そして、1箇所、1箇所ガーゼで綺麗に拭き取り傷口軟膏を塗る。
そして、救急箱から、また何かを取り出し、私の腕の傷口にそれを塗った。
「痛い!」
「痛い!痛い!」
「バカ!バカ!バカ!」
自由に動く左足で
「痛い!痛い!しみるの!」
「バカじゃないの?」
辺りに接着剤の臭いが漂う。
涙がまた出てきた。
「痛いよ~」
「バカな
再度、左足で
「わっ!」
私は、自分の太股を見ておとなしくなる。
「…
「私も死んじゃうの?」
綿棒でたくさんの傷口軟膏を取り、太股の傷口の上に軟膏で蓋をする。
そして、その上にガーゼを敷き詰めて包帯でぐるぐる巻きにした。
「死にたくなかったらおとなしくしていないと。」
私は、差し出した手を
子供の時…私が、お父さんやお母さんに叱られ、1人で、いじけて泣いてるいるといつも
今みたいに、両手を差し出すと抱っこして、神社内を散歩してくれた。
部屋に戻りたいと言うと抱っこしたまま部屋に運んでくれた。
今は、寝台に向かっている。
寝台にそっと置かれた。
「なにか飲む?」
赤色液体が、入ったコップを持って
私は、コップの中に本当に血が、入っていると思い、それが、怖くて更に大声を上げて泣いた。
予想意外に私が泣いたので
それ以来、怪我をして、血が流れたら、血の補給と言ってトマトジュースを飲むようになった。
ご丁寧にストローまで刺してある。
私は、枕元にあるクッションを手探りで引寄せ、クッションで少し状態を起こしてトマトジュースを飲む。
その姿を見ながら、
明治町にある案内板で、現在位置と周辺を確認して、記憶していたら私がいなくなった事に気が付いたが、下手に動いて行き違いになるよりその場にいれば、私が戻って来ると考えたらしい。
でも、意外にも私が戻って来るのが遅いと感じたらしい。
そしたら、目の前から、案内板が消え、気が付いたら岩屋の洞窟内に居たらしい。
私は、「洞窟に行ってからは?」と聞いた。
そして、ひたすら続く洞窟内の一本道を方位磁石で神社方向に歩いて、気が付いたら島の中腹の洞窟の出入口にたどり着いたと。
神社に戻り、すぐに蔵に向かったが、私の姿は、なく、私の部屋に向かったが、そこにもいなかった。
そして、地下の牢獄に戻って来たら、昔からある石でできた寝台の上に私が寝ていたらしい。
そして、今に至る。
私は、明治町で、人混みの中に知っている女性の顔が、あった事を話した。
そして、気が付いたらその女性を追いかけていた事も。
そして、その女性を見失った場所に見覚えのある建物があった事を。
でも、その建物に入ったが、私の知っている部屋ではなかった事を。
そしたら、
でも、自分では、少し歩いたつもりが、隣町まで歩いていて、戻るのに時間がかかってしまった事、やっと案内板に戻ったが、案内板の前でいくら
当たり前だよね。
案内板の前で待っていた私は、夜が、迫るのを感じて歩き出していたことを。
私は、歩いて歩いて、気が付いたらあの建物に戻った事を。
お金がないから、何でも手伝いをするから泊めて欲しいとお願いしたことを。
お金持ちの婦人の仕事依頼の手伝いをすることになった事を。
その仕事は、
私が、
早く戻らないといけない事を。
薬の成分に睡眠薬が、入っているのか、私が、疲れ果てていたのか、私は、すぐに睡魔に囚われた。
翌朝、私の身体は、異常なのか?
全ての傷口が塞がろうと頑張っていた。
昨日は、身体中痛くて、立ち上がることも、歩くことも出来なかったが、今朝は、普通に歩ける。
そして、すごーーーーーーく、お腹が空いている。
もしかして、私、昨日何も食べていないじゃん。
「食べ物…」
「餓死しちゃう…」
「お母さん!朝ごはん食べよう-。」
母に朝ごはんを催促しながら牢獄から母家の台所を目指して移動開始する。
お腹が空いて、歩くのがしんどい。
お腹をかかえながら休み休み進む。
「お母さん。」
台所に着いて母を呼ぶ。
返事がない。
…いない?
テーブルの上に置き手紙を発見する。
「お父さんと映画を観に行きます。
何でもあるものを食べてください。」
えーーーー…
ガス台の上にある鍋の蓋を開けてみる。
湯気が立ち上がった。
豚汁だ。
隣の鍋の蓋も開けてみる。
お!茹でたトウモロコシだ。
トウモロコシを1本持ち上げる。
まだ、温かい。
トウモロコシを食べながら、コンロに火をつけ豚汁を温める。
「フフフッ。ママ最高。」
でも、トウモロコシと豚汁は、合わないよね。
トウモロコシを食べ終わってから豚汁を食べよう。
「あ!豚汁の匂いに誘われて起きてきた?」
「おはよ。調子は、よさそうだな。」
「起きたら、
「もしやと思った。」
トウモロコシを食べ終え、コンロに近づく豚汁が温まっている。
お椀を2つ取り出す。
「
「じゃー、食べ終わったら蔵に行ってみるか?」
不意に
「うん。」
私は、嬉しそうに返事をした。
豚汁を食べながら持ち物を考えた。
…1時間後。
「
「わからない。でも、俺も毎回洞窟に行くが、毎回、到着点は、ばらばらだ。同じ到着点は、なかったと思う。行ったことのある到着点の近くに到着したことは、あったと思う。」
「次は、行けるかな?」
岩屋の洞窟に行ってしまった。
「どうだろう?」
「焦ったところで、どうにもならない。」
「歩き疲れたから、少し休んだらまた、行こう。」
「その前に、
台所の食卓の椅子に座される。
太股の包帯を取り、ガーゼを剥がして、また、傷口軟膏を塗られ新しいガーゼと包帯で梱包された。
そして、液バンが剥がれ落ちてしまったところにまた液バンを塗られた。
今日は、傷口が回復中なのか、しみない。
「OK.」
ご飯も炊いてある。
流石、ママだ。
冷蔵庫をあける。
「納豆発見。」
「
「食べる。」
歩き疲れたせいか、身体が回復のためのエネルギーを必要としているのか、お腹が空いていた。
この時、まだ、私は、明治町に行けると思っていた。
…一週間後。
「
「そうだな。俺的には、絶対行きたい。」
「今日が、最終日だからな。」
最終日…
コロナウイルスは、自然に落ち着いて行くものだと勝手に思っていたが、逆だった。
増える一方だ。
私は、この一週間、人混みとは、無縁の洞窟の世界で過ごしていたが、世間はコロナウイルスを確実に広げていた。
なので、
「でも、
太股の包帯をほどきながら
「なんで?」
「あんなにたくさんあった、切り傷がもう治ってる。太股の傷も、跡が残らないで塞がっているから。」
「フフフッ…高校生パワーだよ。」
そう言って椅子に立ち上がり、スラッとした美脚を見せびらかした。
「ハイハイ。今日は、薄いピンクのパンツね。可愛い。可愛い。」
自分の顔が、赤くなったのを感じる。
「
「死ね!」
椅子の上から横蹴りを喰らわす。
「ムッ…」
「避けるな!」
再度、横蹴りを繰り出す。
気持ち悪い動きだ。
「
「…あっははははっ」
なんか、子供の頃に戻ったみたい。
楽しい。
…8時間後
「
「そうだな。もう、何時間、出口を探して洞窟をさ迷ってる?」
「蔵を出発したのが、10時くらいだね。」
時計を見る。
「そして、今が、午後6時です。」
「8時間か…疲れたな。」
「6時か、晩ごはん食べるか?」
そう言って、洞窟内のいたって床が平らなところを探しだす。
「ここが、いいかな?」
小さい折り畳み式の椅子を2つと折り畳み式テーブルをリュックサックから取り離し設置する。
そして、乾パンの缶詰とミネラルウォーターのペットボトルをテーブルの上に置く。
「
「大正時代じゃないんだから他のもの持ってくる思考は、ないの?」
そう言って私は、リックの中から携帯の保温バックを取り出す。
「凄い。
そう言って、保温バックの中からトウモロコシを取り出し
「旨い。」
その言葉に私もトウモロコシに噛りつく。
「美味しい。」
いつも、洞窟で乾パンしか食べていなかったので、トウモロコシが何か特別な食べ物に思えた。
2人とも無言でトウモロコシを平らげた。
今だ。
「ジャジャーン!」
「デザートの時間です。」
そう言って
「今日は、特別に1人、2つです。」
ミカンを2つ手渡す。
「
笑いながらミカンの皮を剥く
「ふー、美味しかった。」
「 初めて、洞窟で乾パン以外のものを食べた。」
「なんで、いつも乾パンと水なの?」
「いつも、俺1人で岩屋の洞窟に来た時は、平坦な道は、少なかった。」
「すごい狭い穴を通ったり、這いずらないと進めない高さの隙間だったりかなり進むのに苦労していたから。」
「乾パンは、軽いし缶詰だから丈夫だった。」
「水なら、飲んだり顔を洗ったり、傷口を洗ったりと色々つかえる。」
「この一週間、
「そうだったんだ。」
そんなとこ、この一週間で行ったことがない。
「多分…
優遇されてる…
「そうなのかな?」
突然、
「え、え、えっ…」
消えた!
「え?」
うそ。
一瞬で
「
その場で、叫んで、
「
本能的に危ないと思った。
私も何処かに飛ばされてしまうかも…
「
小声で呼びながら近づく。
「
「
突然、
「え!
「穴だ。落とし穴が、あった。」
穴?
ゆっくりと地面を確認しながら進む。
確か、この辺だよね
「あ!あった。」
1m先に地面に穴が開いている。
地面の確認しながら近づく。
自然にできた落とし穴なら、まだ、他にもあってもおかしくない。
穴にたどり着き、穴を覗き込む。
穴の底でライトを動かす
「ふ~、」
よかった。落ちた深さは、2mぐらいかな?
「
穴に向かって叫ぶ。
「
「大丈夫だ。」
「落ちたときは、焦ったけど…」
「でも、落ちて、ラッキーだった。」
本当、よかった。
「何が、ラッキーなの?」
「落ちた場所は、前に来たことのある場所だ。」
「ここからなら、岩屋の出口に向かう道がわかる。」
「本当!」
「迷路に迷い込んだと思ってたよ。」
「迷路かぁ…クククッ」
「
私は、子供の時のように
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