第3話 地下牢屋

夏だけど、朝晩は、涼しく感じる。

青い空に白色雲が、流れている。

気持ちいい朝だ。

流れて行く雲を見ながら考える。

目には見えないが、オゾン層は、確実に薄くなっている。

太陽が見えない時間帯は、気温があきらかに冷たい。

逆に太陽が見えている時間帯は、果てしなく熱い。


多分、、私が生きている間に日本から冬が、なくなってしまうのだろう。

これから環境が急変しだすのかな…


ヤバい自分の世界に浸ってしまった。


今、私は、本殿ほんでん直会殿なおらいでんの間にある住居区の中庭にいる。

中庭と言っても、池や小さな滝もある。

大きな盆栽みたいな人に創られた枝振りの松。

何処から運ばれて来たのか、長方形の巨石が壁の様に建ち並ぶ。

巨石を水流で削ってできたであろう滝。

滝壺から流れた水が溜まり池を形成している。


足元に視線を移す。

冷たく綺麗な石畳が、広がっている。

人の手で削って平にしたのだろうか。

見ためは、荒削りぽいが、裸足で歩くとツルツルと気持ちが良い。

ここは、昔も今も同じ時間が流れているのだろう。

私が子供の時に、初めて此処に来たときと何も変わらない。


私が好きな場所の一つだ。

そろそろ叔父サムチョンを起こしに行くか。

波木 ハキは、手に持っている小枝を石畳と土の境目辺りの土に挿し込む。

子供の時に何気なく土に挿した小枝は、今は、私と同じ背丈ぐらいの木に育っている。



住居区に戻り、遠回りをして、本殿ほんでんに向かう。

途中、拝殿はいでん幣殿へいでん御饌殿みけでん舞殿ぶでん祓殿はらえでん直会殿なおらいでんと色々な神社の施設を横切る。

施設といっても、全て木造の立派な建物だ。

渡り廊下ですべて繋がっている。


ここの神社って、一般の人は、敷地の一番、端にあるお参り用の小さな鳥居と小さな御社しか観れない。


こんなに立派な社があるのに。

視線の先に御社が見える。

朝陽を浴びて金箔がキラキラ輝いている。

こう言うのを神々しいと言うのだろうか…


叔父サムチョンに昔、尋ねた事がある。

どうしてこんなに立派な社があるのに一般参賀などに使わないのと。

叔父サムチョンの答えは、意外だったが、今思えば、納得できる答えだった。

御社は、元々、神様の棲みか。

色々な施設は、神様が、仕事で使われる部屋。

波木 ハキは、巫女の末裔。

巫女とは、神に仕える女性の事。

だから、ここは、 波木 ハキの家ではなく、 波木 ハキが仕えてる神様の家だね。


子供の私は、叔父サムチョンの答えに、もしかして、私は、神様に仕えるものだから、特別な力が、あるのかもと思い。

私もプリキュアみたいに変身できるのかな?

と、色々な妄想をして、ここの神社の中に特別な変身アイテムがないか探しまわった。

でも、結局、何も見つからなかった。


翌朝、鳥の囀りと水の流れる音で目が覚めた。


鳥の囀りは、朝によく聞くが、水の音は、雨音しか聴いた事がなかった。

水の流れる音を不思議に思い、音の根源を辿って、中庭を発見したのだ。

それまでは、中庭が、あることは、知らなかった。

お父さんからも、お母さんからも、中庭の存在を聞いた事は、なかった。


…でも、私から中庭の話をお父さんやお母さんには、しなかった。

誰かに言ったら中庭が、消えてしまう様な気がしたからだ。



本殿ほんでんに続く渡り廊下が途中で2手に別れる。

一本は、本殿ほんでんに続く、もう一本は、地面にめり込んで行く。

地面にめり込んでいるとは、そのままの表現だ。

渡り廊下を無理矢理、地面に挿して、捩じ込んだ感じだ。

最初に土を掘り出して、その後に渡り廊下を造ったと言う感じではなく、本当に完成した渡り廊下を地面に捩じ込んで創った感じに見える。

その地下に続く渡り廊下の先に石畳の螺旋階段が1周あり、その先に地下牢屋がある。

誰を幽閉するために造ったのであろう。

地下牢屋は、元々自然に出来た洞窟を利用して創られているらしい叔父サムチョンの情報だと。


渡り廊下を進みながら、廊下と地下の壁の隙間をみる。ほとんど隙間がない。

廊下の幅で洞窟が存在している。

天井は半円状で、人が造った感じはしない。

目の前に石畳の螺旋階段が現れた。

幅は、渡り廊下と同じで、そのままの幅で1周地下に延びている。

螺旋階段部から壁と天井も石の感じがする。

石と言うより岩を削って造った感じがする。

螺旋階段の先は、石畳なのだが、今は、界面活性剤だったかな?水を吸ってくれるヤツ。

石畳の上にその界面活性剤のプレートが引かれ、その上に毛足の長いタイルカーペットが引かれている。

牢屋の中の床も同じ仕様になっている。


牢屋の格子の前のタイルカーペットに腰を下ろしてそろそろ10分が経つ。


叔父サムチョンを呼びに地下牢屋に来たが、あと15分待ってとテレビに齧りついて離れない。


「そんなに真剣に何、観てるの?」

テレビから視線を外さない叔父サムチョンに声をかける。


「仮面ライダーゼロワン。」

え…仮面ライダー…

叔父サムチョン、子供じゃぁ、ないんだから。」


「平成仮面ライダーシリーズは、大人も十分楽しめるるぞ。それに平成ライダーは、クウガから始まるけど、クウガや555や電王の俳優さんは、今では、人気の俳優さんだぞ。」

テレビ画面から視線を外さず反論してくる。

でも、俳優さんの名前を聞いてびっくりした。


そんな人達が仮面ライダーだったなんて。

「でも、平成仮面ライダーシリーズて、言ったけど、今は、令和だよ。」

ちょっとだけ、反論してみた。


「仮面ライダーゼロワンは、令和1年に始まって、そろそろ最終会が近い。今年令和2年になったけど仮面ライダーゼロツーも出た。令和1年だから01ゼロワンね。それで令和2年になったから02ゼロツー。」

やはり、叔父サムチョンは、自分が好きな事に関しては、畳み掛けてくるな。


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