第2話 地図

私が蔵から見つけた古文書は、実は、異次元の場所から持ち帰った品物だったのだろうか?


さっきは、テーブルの上に寝かされた女性の顔が鮮明に思い浮かんだが、今は、ボヤけた感じで、ロングヘアーぐらいしか思い出せない。


そんな事を考えながら、牢屋に入っている叔父サムチョンを見ていたら不意に質問したくなった。


叔父サムチョンこの地下の牢屋て、なんのために造られたのかな?」

「いつ頃の建物なの?」

視線を天井辺りに向け、叔父サムチョンは、何かを計算しているようだ。


「創立年代は. . . 不明。」

「社殿は、確か、嘉永2年か。」

「この牢屋の目的は. . . 」


私の質問の答えを考えてたんだ。


「嘉永2年て、西暦何年?」


「1849年だね。」


今から、約171年前からあったの。

「そんな昔からあったの?」

私は、知らなかった。


タケルに聞かなかったのか?」


「蔵にある書物で、大体の年代は調べてられた。」

「多分、嘉永2年の建物は、この地下と蔵だけかな、他の建物は、老朽化で、修繕や建て替えをした資料が残ってたよ。」

叔父サムチョンの言葉に驚く。

蔵で、よく遊んでいた。

色々な絵や掛軸があって、面白かった。

でも、古文書関係は、難しそうでちゃんと読んだ事がなかった。

ここの歴史が、書かれていたんだ。


「あ、疫病隔離…今の俺と同じか。」

叔父サムチョンが思い出したように言った。

疫病隔離に使われてたんだ。

この牢屋。

「それから、不問の牢屋…神隠し牢屋だったかな…」

まだ、叔父サムチョンは、ブツブツ言ってる。


「神隠し牢屋?」


「うん。そう呼ばれていたみたい昔は。」

神隠し牢屋て、何だろう?

人を隠した牢屋?

何のために隠す?


波木 ハキ、まだ夏休みだろ。」

また叔父サムチョンから問が飛ぶ。

「そうだよ。」

私の返事に楽しそうな顔をする。


「じゃぁ、探してみる?」


意味深な答えを投げかける叔父サムチョン

何を探すのか聞いてみる。

「探すって、何を?」


「その地図の場所。」

叔父サムチョンは、床に落ちている地図を

指差す。


「えー!」

「私、パスポートないよ。もしかして、叔父サムチョンが、お金出して作ってくれるの?」

「えー、人生初の海外旅行は、韓国かぁ。」


「おーい。」

先走る私に水を差す。


「なに?」

違うのかな?


「その地図、多分、この辺だぞ。」


「え. . . 」

韓国語で書かれた本だから地図も韓国のどこかだと思った。


「コロナ禍の中、韓国に行くには、出国48時間以内のPCR検査の陰性の証明書、韓国政府発行のビザ、韓国に入国してからの2週間の隔離、日本に戻てからも、2週間の隔離が発生する。隔離だけで、約1ヶ月かかるぞ。」


叔父サムチョンに畳み掛けられた。


床に落ちている地図を拾う。

「この地図、日本なんだ。」

地図を見て、また、鳥肌が立った。

「キャー!」

声をあげ、また、地図を投げ捨てる。


叔父サムチョンは、木格子から手を伸ばして、私が投げ捨てた地図を拾い上げ地図をみる。


叔父サムチョンが、見ている地図を覗き込む。

女性が横たわっている建物の扉が、開いている。

最初に見た時は、扉など書かれていなかった。


でも、その地図を見て確信した。

多分、この地図の女性は、私が、蔵の中で見た女性だ。

だから、叔父サムチョンも、この地図は、この辺の地図と言ったに違いない。


それに叔父サムチョンは、蔵でしたと言っていた。

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