03 午前3時29分、限界来る.

「いや、もう、さすがに寝たほうがよくないですか?」


「いやです」


「何本目のエナジードリンクですか」


「おごってもらってるんで、ぜんぜん大丈夫です。行けます」


 公園の、ベンチ。


 二人で座って、夜を眺めていた。


 流れ星。とっさの、おねがい。


「たとえ明日が」


「はい?」


「いえ。なんでもないです」


「やばいな、眠くてコミュニケーションに齟齬が発生してきてる。もう一本、おねがいします」


「わかりました」


 たとえ明日が来なくても。今日が続けばそれでいい。そういう、おねがい。


 彼の言葉が、私のなかで、残った。それだけでいい。それだけで。生きていける。


「どうぞ」


 渡す。彼がキャップを開けて、飲む。


「あれ、これ」


「ホットココアです。持ったときに分からなかったんですか?」


「ごめんなさい眠くて」


 彼。ふわふわしてる。


「じゃなくて。ホットココアは致命的なミスですよ。寝る前に飲むやつじゃないですかこういうのは」


「おやすみなさい。よい夢を」


 彼の隣に座って。


 彼の背中を、ゆったり、やさしく、叩く。抱いた子供を寝かせるように。


「たとえ明日が来なくても。あなたが私を忘れても。私は、あなたを覚えていますから」


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