薄氷の塔
なんと薄氷の上で踊っていたことか。不安定で、私を固定すらしてくれない微睡みでクロールしていただけなのだ。それもこれも、そうしていると疲れる割に、何も産まないからである。馬鹿の考え休むに似たりとはよく言ったものだが、それを馬鹿の視点から見てみると、思考とは最高の暇潰しであることがわかる。だが、うっかり間違えて、日常を食ってしまうような考えをもってはいけない。だから、形而学上の世界の没頭するのだ。暇がこの喉につまって窒息してしまうことがないように……。
そうして得た収穫を、脳味噌と日記だけに残し、質量ゼロの、けれど体積無限の塔を建てて喜んでいたのである。
しかし、そんな偽物は、真摯に生きた人間の一編の文章に砕かれるのである。シンプルなことである。真理こそが真理であり、真理は本物であり、本物の人間とは、その身体と精神をもって人生において、事をなし続けた人間である。少なくとも、肉体も精神も伴うことのない遊びで人生を食い潰す人間ではない。
理解して一つため息をつく哀れな男。彼は生きている。
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