それすら愛してます

 何かを考えると、結局あなたに会いたいという結論に落ち着く。あなたがいないということ、胸にぽっかり穴が空いてしまったこと。そこから無数の羽虫が湧いてきて、視界を埋め尽くしていること。それら全てが絶望に思えていた。

 けれど、そうでもないのかもしれない。

 欠落からどれほど醜悪な化け物が現れようとも、かつてあったこと今の虚空とのギャップに精神を握りつぶされようとも、心に指向性があるというのは、極めて幸福なのかもしれない。宙ぶらりんに生きることに比べれば、縛られて生きることの苦痛など、クッキーの滓よりも小さい。失って生きることは、何も手に入れずにいるよりも遥かに上等なのだ。

 手放すことは、手に入れることと同じ位贅沢なのだ。

 空っぽになって、その痛みに染み入ることは、悲しいようで幸福なことなのだ。問題は、それの感触が哀切と似ているから、辛いこと、ない方が良いことと捉えられてしまうことだ。よくよく優艶な瞳で見てみなさい。それが愛だよ。ただの通俗的慣習に騙されないで。あなたが思うことは、何にせよ、暖かいことならば幸福なんだ。

 そうだ、それの有無に関わらず、思うこと、祈ることが、もっとも優しい幸せなのか。

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