道半ば
なんだかひどい世界に産み落とされたような気がした。
たった一人愛する人の心を覗くことも、人生を安寧にデザインすることすらできない。全てが煙草の煙よりも蒙昧で、明日を手に取ることもできない。なに一つ確かに触って確認できないのに、それらが列をなしてこちらを飲み込もうとやってくる。まるで風だ。いつもあちらからやってきて、こちらから触りに行くと何の返事も返さない。なんてわがままで自分本位なんだ。人生もそうなんだ。その姿を立ち現すことはせず、しかし確かに私たちに糸をつけて引っ張っている。自分で操れるものが、結局のところ何もないのだ。しかし、諦めると途端に彼らは糸を切り離し、完璧な死体が出来上がる。動けば操られ、動かなければ血に沈む。
一体どうすればいいんだ。
私たちは、そんな世界で、せめてこの心だけは糸ひかれまいと、必死に誰かを愛そうとするんだ。愛こそが全ての泉であり、それを心につくり……何かが入り込む余地もないほどに自分を満たすんだ。
でも……ああ、人生よ! あなたはどこまで残酷なのだ!
その愛すらも道徳や宗教観、社会的思想に飲み込まれてしまった。私たちは、もはや純粋な愛を知ることはないのだ。古今東西一体何人の天才たちが、愛を監獄から出そうと頭を捻ってきた。けれど、そうではないのだ。愛とは、魂に宿るもので脳みそに宿るものではないのだ。なればこそ、頭よりも体の……感情というより感覚なのだ。
だが、神にあだなす人生という悪魔は、記憶と思考とを痛いほどに結びつけた。記憶と思考とでセックスさせたのだ。そこに生まれるのは、言語化しかされない歴史だ。私たちは表情も痛みもない歴史を見て、それに倣おうとするのだ。
そんな歴史と今日に、愛が通えるか?
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