二人目の僕らへ
世界ってのは随分残酷なもんだ。誰かが見つけたものをもう一度見つけても、誰も振り向いちゃくれない。
新しいもの好きも極まって、ついには言葉まで新しいものしか受け入れらなくなた。僕らのこのちっぽけで、けれど切実な思いは、巨人たちの影となって誰にも届いてくれない。天才でない僕らは常に二番目で、誰かの足跡をなぞることしかできない。
僕らは、どうしたって肉声を届けられない。
この絶望にどうやって立ち向かおう。僕にはわからない。僕だって、全てを飲み込まれてしまった人間だ。時には、合わせたり諦めたりもした。だけど、約束するよ。僕は叫び続けるよ。助けてくれって。この痛みを知ってくれって。
僕は天才じゃない。賢くもない。真面目でもないし、善人ですらない。日記に書かれた目標を尻目に今日も寝てしまうし、自分を守るために他人を貶めたりもする。本当に、どうしようもない、ただの人間だ。だけど、それでも生きている。自分の体を持って、自分の頭を持って、自分の感情を持って、自分の人生を持っている。この事実だけは、誰にも覆せない。どんな天才でも、ここだけは同じなんだ。だから、僕のこの思いも、平等なんだ。同じだけの価値を持っているんだ。社会的評価なんて捨ておけ、僕が言いたいのは、僕らの声は、巨人の影になろうと、天才ども二の舞になろうと、確かな存在の僕らが発した切実な思いなんだ。これだけは誰にも触らせちゃいけない。
僕らの心は僕らのもの。
僕らの苦しみは僕らのもの。
例え、何億の先人が経験していようと、間違いなく僕らのもの。
だから、みっともなく泣き叫ぼう。くだらないことで喉が枯れるまで喚いて、涙に溺れながら眠ろう。そうして痛みと共に生きよう。彼らの手を握るのは天才じゃなくて、当人の僕らだ。
社会から認められない僕ら。それでも生きていかなきゃ。せめて、自分の全部は自分のものにしなきゃ。大丈夫、誰も怒らないよ。きっと。
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