遠く離れたの?

 もう優しさだけでいいじゃないか。沈痛とか、悲恋とか、強欲とか、セックスとか、そんなもの全てを放り投げて、産湯みたいな優しさに浸かるだけの世界でいいじゃないか。

 人間性の暴走が、社会性と道徳心とのカクテルなら、そんなもの火にくべて、灰の前で虚空に耽るのが最高じゃないか。何もなくなって、自分すらなくなって、そんな時に現れる無限の人間性と、紛い物の死体から昇る煙。それらが合わさって、ヴェールとなり私たちを包み、目を覆い、そして新たな世界を見せるのだ。

 ……だなんて、吹けば飛ぶような宇宙で、小人は大層なことを言う。綾取りでどんな目を作っても、紐の長さが変わらないように、小さな宇宙では大きな実体は有り得ない。

 だから、紐の間の空間をつかって、大きく見せるんだ。

 哀れだと思うかい? 概念で何人殺したかもわからない人間が。

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