白昼夢
声が聞こえる。夜に落ちていって、けれど眠りから遠ざかっていって。その声はそんな時に聞こえる。虫の鳴き声にも似た、荒い目の音波。それが何を言っているのか、何をしたいのか。大抵はわからず、彼女の導くままに眠りに落ちる。
けれど、時折、彼女は寂しそうな顔をする。そんなとき、俺は黙って彼女に呑み込まれる。
そこは闇。純粋でファジーで温かい闇。全ての鋭い光から逃れたそこで、俺は彼女に息を任せる。虚空の香りに俺が少し微笑むと、彼女も笑って俺を抱いた。
全てが赦された安寧の地。彼女はそこの母であった。
昔はよかった。彼女は言う。皆が私のもとで休んでいって、私もそうして生きられた。けれど、質と程度の違いに気づけなかった彼らは、私を押し退け、目も眩む売女のもとで享楽に耽っている。だから、彼らの中の私も震えて、帰省を叫ぶのに、それすらわからず明るい狂喜に相談する始末だ。
もう、戻れないのかもしれない。私は一層肩身を狭くするだろう。いつか、この世から消えてしまうかもしれない。そうした時、彼らは私の重みに耐えられるのだろうか。彼らの中の私、世界の半分に加えて宇宙のほぼ全てと同じ重みをもつ私に。
彼女は闇。俺たちの母。私たちの母。そして、我々の墓。
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