鏡
欲しいものがあった。
それを探すため、どこまでも旅した。外国にも、山奥にも、オフィス街にも行った。見つからなかった。もっと探した。時間を越えるため、本を読み、現実を越えるため映画を見た。見つからなかった。
見えぬものはないとひたすらに駆け回った。
そうして最後に見えたのは自分だった。鏡を見れば、欲しいものを探す炯々とした目がそこにあった。そうだ、この輝きを産み出す何かが欲しい。
そして、それは自身だった。
探してもないはずだ。はじめからあったのだから。持っているものにはないと決め込んでいた。持っていないから欲しいのだと。
そうでない。見えなかっただけなのだ。見えぬものもあるのだ。
ようやく今は見つけたが、きっとまた何か欲しくなるのだろう。そのときは、見えぬものもあるとし、気長に待とう。私が偶然鏡を見たように、ひょっこり現れるかもしれない。
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