第4話 下は見ないで

視線はそのまま、ゆっくりと中を覗く。

特に何も無くまたフタをも閉めようとした時、また、ポチャンと、水の音が聞こえた。


シャワーを止めてその音を聞いていると意外と近くから聞こえた。


「なんの音?」


俺はうーんと考えて上をむくと、何かと目が合った。


『あ。』


「…。」


『の、呪ってやるー!』


「…警察。」


『冷静か!!』


俺はお風呂場から1歩出た足を戻してもう一度上を見る。

天井に、人が張り付いている。

それはもう蜘蛛のように。


「キモ。」


『今キモって言った!?私だってね!こんなふうにバレるはずじゃなかったのよ!!もう!!失敗したわ!!』


「…誰?」


『私はこのお風呂場の幽霊よ。』


「ふーん。」


『反応うっすいわね。』


そんなことは無い

俺はかなり驚いている。今だって足が少しすくんで動けないでいる。


とりあえず通報しないと。

不審者が風呂場にいることを誰かに伝えないと。


「あの、いい病院知ってますよ?」


『どこも悪くないわよ!!私は幽霊!!ここに住み着いてる幽霊なの!!』


「そうなんですか。ところで、俺そろそろ寒いんですが。」


俺は視線を少し下に下げる。

天井に張り付いていた彼女も俺の視線に合わせて下を見る。


『き、きゃあああああああああああああああぁぁぁ!!イケメンのち〇ち〇!!』


いや、叫びたいのは俺だ。というかち〇ち〇とか言わないで恥ずかしい。

とにかく静かにさせないと。もしほかの人がこれを聞いて部屋にでも入られたら、俺の方が不審者になりかねない。


「うるさい。」


『無垢な乙女にそんなもの見せるのが悪いんでしょ!!』


俺はとりあえず一旦風呂場を出てタオルを腰に巻いた。

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