第3話 親戚

「客も減ってきたし、そろそろあいつも帰ってくるだろう。 もう十八時だしそこにあるテレビでも見ながら残りものだがこのオムライスでも食べな」


哲雄は余った材料で作っていたオムライスを伊織に渡し、カウンターに座って左奥にあるテレビでも見ながら食べろと言った。


「ありがとうございます。 いただきます!」


伊織はいただきますと言い、一口食べた。


「お、美味しい……口の中で溶けあってハーモニーを奏でている……」

「グルメリポーターみたいなこと言うなよ。 照れるじゃねぇか」

「いえ、本当に美味しいです! 手作りなんて久しぶりです!」

「そうかい。 味わってくれな」


伊織は哲雄と談笑しながら食べていると、店の扉が勢いよく開いた。伊織は扉の方を見ると、そこには制服を着ている女の子が立っていた。

その女の子は茶色がかっている髪色をし、その髪は肩に付く長さをしていた。


顔は目鼻立ちがハッキリとしており、その二重の目元とぷっくりとしている唇を見てとても愛らしい顔をしていると感じていた。身長は伊織よりも小さい百六十センチ程に見えた。そして、制服からも見えるスタイルの良さが女の子の自身にも繋がっているのだと感じていた。


「ただいまー! お腹空いたよー!」

「ちょっと待ってろ。 今オムライスを作ってるから」

「やった! 私オムライス大好き!」


そう言い彼女は伊織の隣に座った。持っていた通学鞄を自身の右隣の椅子に置くと、近くにあったポッドからコップに水を注いで一口飲んだ。


「おじいちゃん早く! お腹空いたー!」


何度も哲雄にお腹が空いたと言っていると、哲雄はオムライスを彼女の前に置いた。


「ほら愛奈、お前の好きなオムライスだ。 ゆっくり食べるといい」

愛奈と哲雄に呼ばれた女の子は、いただきまーすと言って勢いよく食べ始めた。伊織はその様子を見ていると、美味しそうに食べるな―と感心していた。


「そうだ。 前から言っていたこの家に住む男なんだが、お前の隣にいる男だぞ」

哲雄が伊織のことを愛奈に言うと、愛奈が口の中にオムライスを入れながら左隣にいる伊織を見つめていた。伊織は愛奈の方を向くと、笑顔でよろしくねと話しかけた。


「あなたが今日から一緒暮らす遠い親戚の人なんだ! 私は久遠寺愛奈よ。 よろしくね!」

「こちらこそよろしく! 俺は篁伊織って名前だよ」

「伊織君か! あ、確か今年から高校生だっけ? じゃあ先輩なんだ!」

「久遠寺さんは中学生なの?」

「うん! 四月から中学三年生! 今日は部活の陸上の練習帰り!」


そう言い愛奈はオムライスを食べ進めた。伊織は愛奈に先輩だけど、家族になるんだから敬語を使わなくていいよと言った。敬語でなくていいよと言われた愛奈は、伊織に対してありがとうお兄ちゃんと笑顔で言った。お兄ちゃんと笑顔で愛奈に言われた伊織は、ありがとうと返答をした。


「これからよろしくねお兄ちゃん! お兄ちゃんがいる感覚ってこんな感じなんだね!」

「俺も妹が出来たみたいで嬉しいよ。 一人っ子だったから兄妹って不思議な感覚だよ」

「私も! これから毎日が楽しくなりそう!」

「ほら、盛り上がっているところ悪いが食後のプリンだ。 食べるといい」


伊織と愛奈が笑い合っていると、哲雄が残りのプリンを出してくれた。伊織は悪いですよと言うが、哲雄はあまりもので捨てるしかないからなと言ってくれた。


「もう捨てるしかないんだ。 二人で食べてくれよ」

「ありがとう、おじさん! いつもありがとう!」

「ありがとうございます! 凄い美味しいです!」


伊織と愛奈が美味しそうに食べていると、哲雄は二人を優しい眼差しで見ていた。伊織と愛奈が美味しそうに食べていると、哲雄は愛奈が楽しそうで良かったと思いながら食器を片付けていく。


哲雄が食器を片付けていると、カフェに入ってくる人は閉店である二十一時まで誰も入ってこなかった。平日ということもあり住宅街の一角にあるカフェに入る人はいなかった。

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